2019 Fiscal Year Research-status Report
末梢アミノ酸代謝変動による高次脳機能低下を抑制する食環境の構築
Project/Area Number |
18K10997
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
福渡 努 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (50295630)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アミノ酸 / 脳神経科学 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
トリプトファン代謝産物キヌレン酸が脳内で増加すると,神経伝達物質の放出抑制を介して高次脳機能を低下させる.本研究では,キヌレン酸産生機構がアミノ酸代謝と関連することに着目し,末梢のアミノ酸代謝変動が脳内キヌレン酸産生を介して高次脳機能におよぼす影響を明らかにすることを目的としている.令和元年度には,末梢のアミノ酸代謝変動が脳内キヌレン酸産生におよぼす影響を明らかにするため,急性肝炎モデルラット,潰瘍性大腸炎モデルラット,部分肝切除モデルラットについて検討した. 四塩化炭素投与によって急性肝炎を発症させたラットにおいて,脳内キヌレン酸濃度の上昇が認められた.急性肝炎発症ラットの脳におけるトリプトファン代謝経路を詳細に解析した結果,脳におけるキヌレニン代謝酵素キヌレニン3-モノオキシゲナーゼ活性が低下したために,側路のキヌレン酸産生が亢進したことを明らかにした.この結果は,急性肝炎による脳内キヌレン酸濃度の上昇は,末梢のトリプトファン代謝変動の影響を受けるのではなく,脳のアミノ酸代謝経路の変動に起因することを示唆している.デキストラン硫酸ナトリウム投与によって潰瘍性大腸炎を発症させたラットにおいて,肝臓のトリプトファン異化代謝が亢進し,それに伴い非肝臓組織におけるトリプトファン代謝が抑制されることを示唆する結果を得た.さらに,部分肝切除により,非肝臓組織におけるトリプトファン代謝が亢進し,血中キヌレニン濃度および脳内キヌレン酸濃度の上昇を示唆する結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に見出した急性肝炎による脳内キヌレン酸濃度の上昇について,令和元年度にそのメカニズムを明らかにした.さらに,NASHモデル動物,潰瘍性大腸炎モデル動物,部分肝切除モデル動物の解析により,計画通り,平成30年度および令和元年度に,疾病によって末梢および脳におけるトリプトファン代謝変動の有無とその影響を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
1. キヌレン酸産生を亢進する因子を解明するために,肝部分切除モデル動物およびクローン病モデル動物における末梢のトリプトファン代謝変動および脳内キヌレン酸産生への影響とその作用機序を明らかにする. 2. 食餌による脳内キヌレン酸産生抑制機序を明らかにするため,急性肝炎モデル動物およびNASHモデル動物にキヌレン酸産生抑制作用をもつアミノ酸を高濃度に含む食餌を与え,末梢のトリプトファン代謝および脳内キヌレン酸産生におよぼす影響について明らかにする.
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Causes of Carryover |
機器類の管理維持に要する費用が予定よりも少額で済んだため,次年度使用額が生じた. この次年度使用額を実験に要する物品費に充てることにより,より詳細な実験を実施する予定である.
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