2018 Fiscal Year Research-status Report
Physiological activity of chlorogenic acid on skin regeneration
Project/Area Number |
18K11000
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金澤 成行 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (50506243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
峯岸 芳樹 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (10467566)
冨田 興一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90423178)
馬込 卓弥 大阪大学, 医学系研究科, 招へい准教授 (20769731)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クロロゲン酸 / 皮膚再生 / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では、糖尿病や高齢者が大幅に増加し、糖尿病性皮膚潰瘍、高齢者の褥瘡や皮膚剥離などの皮膚障害の発生率が急増しており、慢性炎症の酸化ストレスによる皮膚の細胞死のため治癒が困難となっている。しかしながら、このような紫外線や慢性炎症などによる酸化ストレスに対する皮膚の防御機構は明らかになっていない。本研究はヒト皮膚線維芽細胞を用いて、酸化ストレスを抑制し、炎症を強く抑えることが可能であるクロロゲン酸の皮膚再生能力を明らかにすることで、クロロゲン酸がヒトの皮膚に与える生理作用を解明する。本年度に施行した実験は以下の通りである。 1.皮膚線維芽細胞の増殖におけるクロロゲン酸の影響について;ヒト皮膚線維芽細胞を96ウェルプレートで培養し、クロロゲン酸を添加した群(0、1、10、100 μM)と非添加群(コントロール)に分け、24時間後の細胞数を比較した。クロロゲン酸1、10、100μMにおいてコントロール群と比べて、有意に線維芽細胞の増殖を認めた。しかしながら、これ以上の濃度においては、有意な増殖は認めなかった。したがって、細胞増殖における適したクロロゲン酸濃度は1~100μMの幅におさまることがわかった。 2.皮膚線維芽細胞の酸化ストレスによる細胞死におけるクロロゲン酸の影響について;まず、皮膚線維芽細胞を培養し、過酸化水素を加え(0.5mM)、酸化ストレスを与えることで、細胞死を促した。そこに、クロロゲン酸(10μM)を加え、24時間後のタネル染色(細胞死の検出)陽性細胞の数を測定したところ、クロロゲン酸(10μM)を加えた群では、有意に細胞死の減少を認めた。 以上の結果から、クロロゲン酸は皮膚線維芽細胞の増殖を促す、さらには、酸化ストレス下において、皮膚線維芽細胞の細胞死を抑制することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の期間内での実施計画は以下の5つである。 1.皮膚線維芽細胞の増殖におけるクロロゲン酸の影響について;ヒト皮膚線維芽細胞を96ウェルプレートで培養し、クロロゲン酸を添加した群(0、1、10、100 μM)と非添加群に分け、24時間後の細胞数を比較する。2.皮膚線維芽細胞の酸化ストレスによる細胞死におけるクロロゲン酸の影響について;皮膚線維芽細胞を培養し、酸化ストレスを与えることで、細胞死を促す。そこに、クロロゲン酸(10μM)を加え、24時間後のタネル染色陽性細胞の数を測定する。3.クロロゲン酸が細胞増殖シグナルに与える影響について;線維芽細胞をクロロゲン酸10μM刺激後、細胞増殖シグナルであるERK1/2やAktの活性化の状態をウエスタンブロッティング法で解析する。4.クロロゲン酸が細胞死シグナルに与える影響について;線維芽細胞をクロロゲン酸10μM で30分刺激した後、細胞死シグナルの代表であるJNKやp38-MAPKの蛋白活性化の状態をウエスタンブロッティング法で解析する。5.糖尿病マウスにおけるクロロゲン酸の皮膚再生能力について;11週齢の糖尿病モデルマウスを用いて、両側背部に皮膚欠損を作成し、クロロゲン酸を皮膚欠損部に皮下注射する。背部皮膚をサンプルとして採取し、創傷治癒面積を測定するとともに、H.E.染色および、免疫組織染色を行う。 これらの5項目のうち、最初の2項目を初年度で遂行することができた。当初の計画どおり、順調に進んでいる。なお、初年度の研究においては、予備実験を入念に行っていたため、多くのデータ結果が得ることができ、また、それらの追加実験においても、試薬類を最小限にすることができたため、支出をひかえることができた。以上より、初年度の研究は科研費の支出をひかえながら、当初の計画通り進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の期間内での実施計画の5項目のうち、2項目は初年度で計画どおり遂行できた。今後については、繰り越しさせていただいた研究費を有効に活用しながら、残りの3項目について行っていく。その方策は以下のとおりであり、現時点での変更点はとくにない。 1.クロロゲン酸が細胞増殖シグナルに与える影響について;線維芽細胞をクロロゲン酸10μM で刺激後、細胞増殖シグナルであるERK1/2やAktの活性化の状態をウエスタンブロッティング法で解析する。また、各阻害剤を用いることで、クロロゲン酸のシグナルに関与している分子を同定する。2.クロロゲン酸が細胞死シグナルに与える影響について;線維芽細胞をクロロゲン酸10μM で30分刺激した後、細胞死シグナルの代表であるJNKやp38-MAPKの蛋白活性化の状態をウエスタンブロッティング法で解析する。また、これらのタンパクに関与するシグナル伝達因子(ASK-1, Badなど)のうち、クロロゲン酸のシグナルに関与している分子を同定する。3.糖尿病マウスにおけるクロロゲン酸の皮膚再生能力について;11週齢の糖尿病モデルマウスを用いて、両側背部に皮膚欠損を作成し、クロロゲン酸を皮膚欠損部に皮下注射する。背部皮膚をサンプルとして採取し、創傷治癒面積を測定するとともに、H.E.染色および、線維芽細胞のマーカーであるvimentinやCD31, Keratin5, Keratin15, α-SMA、コラーゲン(Ⅰ,Ⅳ型)の免疫組織染色を行う。これらより、各群において、創傷治癒面積だけでなく、線維芽細胞・上皮細胞の増殖や遊走の程度、新生血管の密度、コラーゲン増生の程度を比較する。 これらの結果をもとに、将来的には、糖尿病や熱傷、放射線などの強いストレス下における創傷治癒を促進させる治療薬、紫外線の皮膚がん予防薬などの創薬への展開を考えている。
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Causes of Carryover |
全期間の研究計画の5項目のうち、最初の2項目を初年度で計画どおり、順調に遂行することができた。なお、初年度の研究においては、予備実験を入念に行っていたため、多くのデータ結果が得ることができた。また、それらの追加実験においても、試薬類を最小限にすることができたため、支出をひかえることができた。 次年度からは、タンパク解析や動物実験など、試薬を多く使用する実験が増えてくるので、繰り越しさせていただいた研究費を有効に活用していく予定である。 具体的には、1.細胞増殖シグナルであるERK1/2やAktの活性化の状態をウエスタンブロッティング法で解析するのに用いる各タンパクの抗体。また、クロロゲン酸のシグナルに関与している分子を同定するための各タンパクの阻害剤と抗体。2.細胞死シグナルの代表であるJNKやp38-MAPKの蛋白活性化の状態をウエスタンブロッティング法で解析するための各タンパクの抗体と各タンパク阻害剤。また、これらのタンパクに関与するシグナル伝達因子(ASK-1, Badなど)の各タンパクの抗体。3.糖尿病マウスにおけるクロロゲン酸の皮膚再生能力の解析に用いる、11週齢の糖尿病モデルマウス、そして、免疫染色に用いる抗体(vimentinやCD31, Keratin5, Keratin15, α-SMA、各型コラーゲン)などに、使用させていただく計画としている。
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