2019 Fiscal Year Research-status Report
抗酸化タンパク質の糖化が引き起こす活性酸素の上昇は、NASH発症の原因となるか?
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18K11003
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
逆井 亜紀子 (坂井亜紀子) 金沢医科大学, 総合医学研究所, 講師 (60570059)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / 非アルコール性脂肪肝炎 / AGEs / TAGE / 活性酸素種 / 抗酸化タンパク質 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、食生活と密接な関わりのある生活習慣病の一つであるが肝癌といった深刻な疾患に進展するリスクが高い。しかし、NASH発症・進展に対する治療法は明確に確立されておらず、疾患メカニズムの解明は喫緊の課題である。我々は、細胞内のタンパク質が糖代謝中間体のグリセルアルデヒドと非酵素的に反応して毒性終末糖化産物(toxic advanced glycation end-products, TAGE)を生成することと、NASH発症・進展が関連することを見いたし、新規のNASH発症メカニズムを提唱している。本研究ではTAGEに加え、疾患部位において観察される酸化ストレス損傷に注目し、抗酸化タンパク質がTAGE化されて不活性化することにより活性酸素を消去できずに、疾患に進展するとの仮説の元、細胞内抗酸化タンパク質とTAGE化についての詳細な解析を行った。 令和元年度は TAGEと活性酸素種(ROS)産生の関係について解析を進めた。肝実質細胞内にTAGE蓄積が引き起こされるin vitroでの解析系を用いた。肝実質株化細胞HepG2にTAGE前駆体のグリセルアルデヒド処理を行った結果引き起こされる細胞死は、強力な抗酸化物質であるN-アセチルシステインにより抑制され、実際に細胞内ではROS産生が上昇していた。一方、予想された抗酸化タンパク質の機能は低下しておらず、ミトコンドリア異常が観察された。これらの結果から、細胞内蛋白質のTAGE化は抗酸化機能の低下ではなくミトコンドリア異常を引き起こすことによりROS産生上昇を引き起こし、細胞死の引き金となる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TAGE前駆体(GA)および活性酸素種(ROS)が引き起こす細胞毒性について研究を行った。GA添加による肝実質株化細胞HepG2の細胞死機構について詳細な解析を行った結果、予想された抗酸化タンパク質の機能低下は観察されなかったが、ミトコンドリア機能異常が引き起こされていた。これらの研究成果について論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、令和元年度の結果を踏まえて細胞レベルでの解析結果が臨床を反映しうるのかについてNASHモデルマウスを用いた解析を行う。モデルマウスの肝臓を購入し、組織内でのTAGE蓄積及びミトコンドリア機能異常について実験をすすめる。
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Research Products
(10 results)