2019 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病の進行を抑える食品成分の解明:ドーパミン代謝の関係から
Project/Area Number |
18K11004
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
中島 昭 藤田医科大学, 医学部, 教授 (20180276)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / DOPAL / キサンチン誘導体 / ドーパミン代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病においては、中脳黒質のドーパミン神経細胞が選択的に障害される。その理由として、カテコールアミン(特にドーパミン)の過剰合成と、ドーパミン代謝の結果生じる3,4-Dihydroxyphenylacetaldehyde (DOPAL)等の代謝産物の過剰産生による細胞障害が疑われている。一方、コーヒー等に含まれるカフェインは、本症の発症リスクを低下させることが疫学調査から示されているが、アデノシンA2A受容体の関与が報告されているのみであり、そのメカニズムは不明である。そこで、ドーパミンと類似構造を有するカフェイン等のキサンチン誘導体が、ドーパミン代謝に及ぼす影響(代謝攪乱作用)に着目して解析を開始した。
具体的には、ラット副腎髄質由来PC12D細胞に、ロテノンを添加してミトコンドリア障害を誘発することにより、神経細胞障害のモデル細胞を作製した。このモデル細胞に、種々の食品成分に含まれるキサンチン誘導体およびその他の物質を添加して培養を継続した。個々の添加物質が、細胞内のカテコールアミン(ドーパミン)代謝経路に与える影響、および、細胞内において産生されるミトコンドリア障害物質DOPALの産生に与える影響を、電気化学検出器を装着したHPLCを用いて解析した。
カフェインを代表とするキサンチン誘導体以外にも、食品に含まれる抗酸化活性を有する物質が極めて強いDOPAL産生抑制作用をすることを発見した。そこで、この抗酸化物質に関連する抗酸化物質を用いてDOPAL産生抑制効果を比較することで、その抑制に必要となる分子構造を明らかにするための実験を進めている。また、NT5DC2という新規タンパク質がカテコールアミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素に結合して、カテコールアミン合成を変化させる可能性があることを発見した。そこで、NT5DC2とDOPAL産生の関連性についても解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記の1)~4)の実験を行い、当初の目的物質であったカフェインを代表とするキサンチン誘導体だけでなく、食品に含まれる抗酸化活性を有する物質によるDOPAL産生抑制効果を検討した。この結果、ある種の食品に非常に多く含まれる抗酸化物質が、キサンチン誘導体よりもDOPAL産生を強く抑制する物質ことを発見した。またこれとは別に、NT5DC2という新たなタンパク質が、カテコールアミン合成系の律速酵素であるチロシン水酸化酵素の酵素活性に影響を与えることを発見した。DOPAL産生抑制物質がNT5DC2の働きに影響するかどうかについても解析を進める予定である。
1)ドーパミン神経細胞障害のモデル細胞と食品成分の反応:有毒なDOPALの蓄積が生じたモデル細胞の作製とキサンチン誘導体等の食品成分の反応、2)細胞内カテコールアミン代謝産物の測定:モデル細胞で産生されたドーパミン代謝産物の解析、3)ミトコンドリア機能の解析:エネルギー障害、アポトーシス、酸化ストレスなどから解析、4)細胞内タンパク質の過剰蓄積の解析:モデル細胞内におけるチロシン水酸化酵素および関連タンパク質のウェスタンブロット法による解析、5)細胞内酸化ストレスの解析:活性酸素種(ROS)生成によるカルボニル化タンパク質の酸化ストレスのマーカーとしての測定
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Strategy for Future Research Activity |
大きな方針転換はない。
基本的には、1)ドーパミン神経細胞障害のモデル細胞と食品成分の反応、2)細胞内カテコールアミン代謝産物の測定、3)ミトコンドリア機能の解析、4)細胞内タンパク質の過剰蓄積の解析、5)細胞内酸化ストレスの解析、を研究推進の基本的な解析方法に定めている。一方、今後得られる結果によっては、新規の方法を導入する可能性を想定している。
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Causes of Carryover |
実験に必要な試薬・消耗品を計画通り購入したが、本学調達課の努力により納入価格が予定よりも低くなり、若干の未使用額が生じた。次年度(令和2年度)に繰り越すこの未使用額については、より高性能な試薬の購入に充てる予定である。
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