2019 Fiscal Year Research-status Report
胆汁鬱滞による脂質代謝異常に対する小腸の役割の解明
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18K11006
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
田中 裕滋 近畿大学, 大学病院, 講師 (00465650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上硲 俊法 近畿大学, 大学病院, 教授 (20233934)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TICE / 総胆管結紮 / NPC1L1阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
胆管ルート以外のコレステロール排泄機構として、血中コレステロールが小腸上皮細胞を介して、直接腸管へ排泄する機構(TICE)が発見された。2019年度は胆汁鬱滞モデルとして胆管からの胆汁排泄を完全に遮断する総胆管結紮(BDL)ラットを用いて、BDLが引き起こす脂質代謝異常のTICEへの影響およびその際のTICEを担う分子機構の解明を目的とした。また、コレステロール吸収を担うNPC1L1の阻害剤であるエゼチミブによる影響についても検討した。ラットにコントロール食か0.005%のエゼチミブを含有した食餌を2週間摂取させたのちSham手術かBDLを施行し、72時間後の血中、肝内、および糞中のコレステロール値と肝臓と空腸のコレステロール関連遺伝子の発現について解析した。コントロール(Sham)群に比較してBDL群では血中のビリルビン、胆汁酸および総コレステロールの上昇と肝内の総コレステロールおよび胆汁酸の増加が認められた。糞中の総コレステロールは、Sham群に比較してエゼチミブ添加(E-Sham)群での増加とBDL群での増加傾向が認められた。BDL群に比較してエゼチミブ添加BDL(E-BDL)群では追加の増加が認められた。遺伝子発現に関しては、Sham群に比較してE-Sham群で肝のAbcg5の増加傾向と空腸のLXRαとAbcg8の増加が認められた。また、Sham群に比較してBDLとE-BDLの両群の空腸でAbcg5の増加傾向とLXRαとAbcg8の増加が認められたがBDL群とE-BDL群の比較では差異は認められなかった。以上より、Sham群ではエゼチミブの肝臓および小腸でのコレステロール排泄増強の可能性が示唆された。一方、E-BDL群における糞中コレステロールの増加は、胆管ルートの遮断下に小腸における吸収阻害に加えて、Abcg5/g8を介したTICEの増強による可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は胆汁鬱滞誘発モデルの1つであるANIT(α-Naphthylisothiocyanate)をマウスに経口投与し、TICEへの影響を検討した。今年度は、ラットに対して胆管ルートを完全に遮断する総胆管結紮(BDL)を施行したところ、術後72時間の糞中コレステロールの増加傾向を認めた。また、小腸のコレステロール吸収を担うトランスポーターNPC1L1の阻害剤であるエゼチミブの影響についても検討したところ、エゼチミブによる作用は、NPC1L1の阻害作用だけでなく肝臓および小腸のコレステロール排泄トランスポーターを増強する可能性が示唆された。BDLモデルにおいてTICEを担う分子機構に関して、空腸上皮細胞のコレステロール関連遺伝子の発現を解析したところ、LXRαの増加とその標的遺伝子であるAbcg5の増加傾向とAbcg8の増加を認めたことより、BDLモデルにおけるTICEの増加傾向の担当分子が推察しえた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、ラットの総胆管結紮(BDL)モデルと小腸におけるコレステロール吸収トランスポーターの阻害剤であるエゼチミブのTICEへの影響を検討したが、2020年度は、BDLモデルに加えて、選択的PPARαモジュレーターであるペマフィブラートのTICEへの影響について検討する予定をしている。これまでに血清コレステロール降下剤であるスタチン系薬剤によるTICEの増加の報告がある。また、血清中性脂肪降下作用のあるフィブラート系薬剤による小腸におけるコレステロール吸収阻害作用に関する報告は認めるが、小腸におけるコレステロール排泄(TICE)への影響を評価した報告は認めない。今回、フィブラート系薬剤の中でも、PPARαに対する選択性が高く、低用量で強い活性化が得られるペマフィブラートのTICEへの影響について確認し、その際のTICEの担当分子機構に関して小腸上皮細胞のコレステロール関連遺伝子の発現の変化を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年3月14日から3月20日まで第59回米国毒性学会で学会発表をする予定をしていたが、米国内でコロナウイルス感染拡大のため学会が中止となり参加できなかったため、研究用試薬購入と論文校正にかかる費用に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)