2018 Fiscal Year Research-status Report
フルクトースと脂肪酸の相互作用による代謝変動の解明
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18K11007
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
岸田 邦博 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (30412703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井原 勇人 和歌山県立医科大学, 共同利用施設, 講師 (00223298)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フルクトース / 油脂 / 脂肪酸 / 脂質代謝 / メタボリックシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
フルクトースと各種脂肪酸の相互作用による代謝変動を明らかにするため、フルクトースを53%、各種油脂(ラード、魚油、大豆油、中鎖脂肪)を15%含む飼料を6週齢の雄性SDラットに4週間給餌した。飼育期間中の摂餌量には有意な差は認められなかった。飼育終了時の体重は、魚油群が大豆油群に対して有意に低い値を示した。副睾丸周囲脂肪、腎周囲脂肪は魚油群が有意に低かった。血中および肝臓中のトリグリセリド濃度は、魚油群が他群より著しく低く、フルクトース誘導性の脂質代謝異常が魚油の摂取により抑制されていることが示唆された。中鎖脂肪摂取によるトリグリセリド低下作用は認められなかった。血中コレステロール濃度は、魚油群が有意に低い、あるいは低い傾向を示したが、肝臓中コレステロール濃度は中鎖脂肪群が有意に低い、あるいは低い傾向を示した。中鎖脂肪の摂取により肝臓でのコレステロール合成が抑制される報告があることから、今後、肝臓での遺伝子およびタンパク発現解析により、生体内での代謝変動を明らかにしていく。小腸での二糖類水解酵素活性は、有意な差は認められず、摂取する油脂(脂肪酸)の違いによる影響は観察されなかった。血中フルクトース濃度も有意な差は認められず、各群にフルクトース吸収および代謝に差がないことが示唆された。血中ASTおよびALT濃度は、各群ともに正常値の範囲内であり、4週間の投与試験では、肝障害等の影響は引き起こされなかったものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた、フルクトース飼料をベースに4種の異なる油脂をそれぞれ含む飼料をラットに給餌する試験を実施することができた。解析はまだ完了していないが、血中および肝臓中の生化学マーカーで顕著な差異を確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した投与試験から得られたサンプルについて、脂質代謝を中心に、肝臓、小腸、褐色脂肪での遺伝子発現を解析する。さらにLC/MS/MSによる網羅的タンパク解析により、肝臓での代謝変動を明らかにする。得られた結果を精査して、次年度は、油脂を2種にしぼり、グルコース食およびフルクトース食にそれぞれ15%の油脂を含む飼料を給餌し、同様の解析を実施する。脂質代謝に限定せずあらゆる代謝変動について観察する。
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Causes of Carryover |
今年度実施した投与試験において、魚油を含む飼料を給餌したラットに予想以上の脂質代謝改善効果が認められた。この結果の信頼性を担保するため、主に肝臓脂質の抽出作業を、当初の計画以上に繰り返し実施した。そのため、従来予定していた肝臓、小腸等の組織からのRNA抽出、cDNA合成、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析を次年度に実施することになった。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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