2019 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重児の減少と母子保健を推進する効果的な公衆栄養施策実現のための基盤研究
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18K11027
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
由田 克士 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60299245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福村 智恵 (荻布智恵) 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (80336792)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 出生体重 / 低出生体重児 / 暮らし向き / 周囲の協力 / 食習慣 / 母子保健 / 公衆栄養施策 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度も、調査済みデータによる解析を進めた。また、3歳児健診を受診した児の保護者に対する質問紙調査も継続した。 近年、所得格差が健康格差にも影響することが指摘されている。そこで、平成30年3月以降に大阪市A区で3歳児健診を受診した児の保護者を対象に、暮らし向きと児の出生体重等の関係を検討した。多胎児や未回答を除く845人を解析対象とした。児の妊娠前と現在の暮らし向きを5件法で質問した。今回はこれらを、苦しい、普通、ゆとりありの3区分、苦しいとそれ以外の2区分で比較した。妊娠前と現在の暮らし向きは、苦しい18.0%と25.2%、普通57.9%と60.7%、ゆとりあり24.1%と14.1%であった。妊娠前では、各群間に出生体重・身長と在胎週数に差はなかった。低出生体重児の出生率は、順に5.9%、11.2%、15.2%と差が認められ、2区分でも同じ関係を得た。現在に差はなかった。本集団では、妊娠前のゆとりあり群で低出生体重児の割合が高く、予想と逆の結果が得られた。今後、同居家族数、母親の身体状況等を調整した検討が必要である。 一方、周囲の協力の有無と幼児期の母親の食意識や児への食事の与え方との関連についても検討した。奈良県内B市で平成28年1月以降に1歳9ヶ月児健診を受診した児の保護者のうち506名を解析対象とした。周囲の協力の状況により2群に分け、母親の食習慣・食意識・食態度・食知識・実践及び児の食習慣との関連を検討した。周囲の協力有群は、朝食、野菜、果物、牛乳・乳製品の摂取頻度が高い者の割合が高かった。また、食事の速度が速くない、惣菜・ファストフードの利用頻度が低い、食事バランスが整っている、適正な食事量を知っている、児の食事の適切な実践ができている等の望ましい状況である者の割合が高かった。児の食習慣も、周囲の協力有群で、朝食の摂取頻度が高い者の割合が高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今般の新型コロナウイルス感染症予防対策のため、予定していた質問紙調査の再開の目処が立っていない。また、さまざまな制約が求められる中で、通常の研究体制が確立できず、データの処理や解析等が思うように進められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今般の新型コロナウイルス感染症予防対策に伴うさまざまな制限が緩和・解除されしだい、自治体において実施している幼児の保護者を対象とした質問紙調査を継続するとともに、調査が終了した部分のデータクリーニングとデータベースの作成を行う。そのうえで、低出生体重児の出生と母親の食習慣、生活習慣、生活環境の関連について、地域ごとでの横断解析や地域間での違いについて多角的に検討を行う。 また、データが確定したところから、妊娠前、妊娠中、出生時、3か月児健診時、1歳6か月児健診時、3歳児健診時のデータをリンケージし、縦断的な解析も行う。出生から3歳児健診までの期間における、母親の食習慣、生活習慣、生活環境ならびに児の出生時体重やその後の発達状況を経時的に検討する予定である。一方、幼児を対象に季節や曜日を考慮した食事調査については、出生時からの健診成績等とのデータリンケージを実施し、栄養状態と児の発達の関係についても、従前の計画にしたがい検討を進める予定である。 今後の感染症予防対策の状況にもよるが、一連の調査から得られるデータを取りまとめ、引き続き、低出生体重児の減少と母子保健を推進する効果的な公衆栄養施策を実現するための科学的根拠の蓄積に取り組む予定である。 なお、本年秋口にさまざまな状況を勘案し、必要と判断される場合は、補助事業期間延長を申請する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症予防対策等に伴い、予定していた調査やデータ処理・解析が実施できなかったり、学会発表が延期になるなどの影響により残金が発生した。 今後の状況により不透明な部分もあるが、論文の作成関連、調査の継続、消耗品の購入等に充当する予定である。 ただし、本年秋口に状況を勘案して、必要と判断される場は、補助事業期間延長を申請し、以降の使用計画を見直す。
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Research Products
(8 results)