2021 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重児の減少と母子保健を推進する効果的な公衆栄養施策実現のための基盤研究
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18K11027
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
由田 克士 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60299245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福村 智恵 (荻布智恵) 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (80336792)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 出生体重 / 低出生体重児 / 在胎週数 / 栄養・食生活 / 母親の体格 / 喫煙習慣 / 飲酒習慣 / 母子保健 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度についても、新型コロナウイルス感染症予防の影響より、フィールドでの調査は実施できず、既存の調査済みデータを用いた解析により研究を展開した。 このうち、対象となった母親について、妊娠前と妊娠中の食品摂取状況の変化および食品摂取状況が児の出生体重に及ぼす影響について検討した内容については、学術雑誌に掲載された。その概要は次のとおりでである。 妊娠期の食品摂取状況と児の出生体重への影響を検討するために、大阪府・奈良県・福岡県の3地区において、2015年4月~2016年8月の間に3~4カ月児健康診査を受診する予定の母親1,302人を対象に、母親の身体状況と喫煙、飲酒習慣、食品摂取状況等および児の身体状況について質問紙調査を実施した。出生体重2,500g以上と低出生体重児の2群で比較すると、低出生体重児群は母親の非妊娠時および出産時体重、非妊娠時BMI、体重増加量、出生児の身長と在胎週数が低く、喫煙率が高かった。さらに、食品摂取頻度と摂取目安量から算出した摂取得点では、妊娠前と妊娠中の両期間で低出生体重児群は野菜料理摂取得点が低く、妊娠前の野菜料理摂取得点および牛乳・乳製品摂取得点が低い群は低出生体重児が出生するオッズ比が1.69、1.58と高かったことから、低出生体重児の抑制に妊娠前からの適切な食事管理、特に野菜摂取の指導の必要性が示唆された。 また、別に在胎週数と出生体重の関連を、母親の身長と体重の変化、出産後1年6か月後の生活習慣等から検討した。この結果、児の出生体重は母親の身長と体重に影響を受けるが、妊娠中の体重増加量を適切に誘導すれば低出生体重児の出産リスクを低減できる可能性があること。母親が出産後1年6か月児後に喫煙・飲酒習慣を有する場合、妊娠前・妊娠中に同等の習慣を有している場合が多く、妊娠前から生活習慣全体を見渡した支援・指導の必要性が改めて確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き、今般の新型コロナウイルス感染症予防対策のため、予定していた質問紙調査を再開することができなかった。また、さまざまな制約のため、以前のような研究体制に戻すことができず、データの処理、解析、学会発表ならびに論文化が必ずしも思うようには進められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症予防対策に伴うさまざまな制限が緩和・解除されしだい、自治体において実施している幼児の保護者を対象とした質問紙調査を再開するとともに、調査が終了した部分のデータクリーニングとデータベースの作成を継続する。そのうえで、低出生体重児の出生と母親の食習慣、生活習慣、生活環境の関連について、地域ごとでの横断解析や地域間での違いなどについて多角的に検討を行う。 また、データが確定した部分から、妊娠前、妊娠中、出生時、3か月児健診時、1歳6か月児健診時、3歳児健診時のデータをリンケージし、縦断的な解析も実施する。出生から3歳児健診までの期間における、母親の食習慣、生活習慣、生活環境ならびに児の出生時体重やその後の発達状況を経時的に検討する予定である。 一方、幼児を対象に季節や曜日を考慮した食事調査については、出生時からの健診成績等とのデータリンケージを実施し、栄養状態と児の発達の関係についても、時間的な調整を行いなから検討を行う予定である。 今後の感染症予防対策の状況に影響を受けると考えられるが、一連の調査から得られるデータを取りまとめ、引き続き、低出生体重児の減少と母子保健を推進する効果的な公衆栄養施策を実現するための科学的根拠の蓄積に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のため、当初計画していた調査や解析等を予定どおり進めることができなかったため、残額が発生した。これらの内容については、研究期間を延長し、執行する予定である。
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