2018 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児者の腸内細菌叢の解析とビフィズス菌製剤による介入効果
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18K11040
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
田沼 直之 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (00281676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 啓 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (50425683)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重症心身障害 / 腸内細菌叢 / 次世代シークエンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
重症心身障害児者(以下重症児者)の多くは慢性便秘症に陥り、緩下剤の内服や浣腸による排便コントロールが必要となっている。また重度の摂食・嚥下障害のため、新生児期から経管栄養による栄養剤の注入のみで成人まで栄養を摂取している場合も少なくない。 近年、次世代シークエンサーを用いた遺伝子レベルでの網羅的解析が行われるようになり、腸内細菌叢の構成や機能が調べられるようになってきた。当該年度は次世代シークエンサーを用いた腸内細菌叢の解析を行い、栄養摂取方法の異なる重症児者の腸内環境の違いを明らかにした。 対象は都立府中療育センター長期利用者43名。栄養摂取方法により、食事群(n=11)、経管栄養群(n=23)、両者の併用群(n=9)の3群に分けて解析した。解析方法は便を採取し、便より抽出したDNAを用いて次世代シークエンサーにて腸内細菌叢を網羅的に解析した。 解析の結果は食事群、経管栄養群、併用群においても門レベル、属レベルで違いが認められたが、経口摂取群と併用群は比較的似ていた。腸内細菌叢の多様性を示すパラメーター(Shannon指数、Phylogenic diversity指数、Chao-1指数)の比較では、3群の中で経管栄養群は最も多様性が乏しく、有意差はないが併用群が最も多様性が高かった。 経管栄養群は常に同じ内容の栄養剤を摂取しているため、菌叢が単純化していることが考えられた。併用群は、食事に加え、栄養素(食物繊維やオリゴ糖など)を含む流動食を摂取しているため、食が多様化した結果、菌叢も多様化した可能性がある。腸内細菌叢の構成には食事内容が大きく影響していると考えられるため、使用している栄養剤による違いなどを今後解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は重症心身障害児者の食事摂取方法の違いによる腸内細菌叢の解析を行うことが目的であったが、まずは食事摂取群と経管栄養群とで菌叢の比較をすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果から、重症心身障害児者の腸内細菌叢は食事摂取群と経管栄養群では菌叢の多様性が大きく異なることが分かった。特に経管栄養群では菌叢の多様性に乏しいことから、さまざまな疾患の発症リスクが高いことが予想される。今後は経管栄養群にターゲットを絞り菌叢解析を行い、栄養剤の違いがどのように菌叢に影響を与えるかを明らかにする。また、また、便秘症の臨床症状との相関についても検討を行う予定である。 さらにビフィズス菌製剤による介入研究の準備を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は外部委託の予定であった解析を自施設で行うことができたので、当初の予定より出費が抑えられた。次年度は解析を外部委託する予定のため、当該年度分も含め研究費を使用する予定である。また年度後半から介入研究を行う場合は、ビフィズス菌製剤を購入するための費用に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)