2019 Fiscal Year Research-status Report
Indigestible carbohydrates which contribute to increasing true large bowel mucus and its a decisive factor.
Project/Area Number |
18K11048
|
Research Institution | Nayoro City University |
Principal Investigator |
田邊 宏基 名寄市立大学, 保健福祉学部, 講師 (60573920)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ビートファイバー / ムチン / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は発酵性を持つ難消化性糖質のうちビートファイバーのみが大腸において粘液の主成分であるムチンの合成を促進することを発見した。その他の発酵性を持つ難消化性糖質は大腸内pHを下げることでムチン分解酵素の活性を抑制し、見かけ上のムチン量を増加させていた。腸内細菌の適応によってpHは元の状態に戻るため、通常の難消化性糖質によるムチン量上昇は一過性である。恒常的なムチン量の増加には合成の促進が必須である。 本研究の目的は、「ビートファイバーを利用する腸内細菌から分泌される物質が大腸の粘液合成を促進する」という仮説を証明し、大腸の防御機能増強を意図してこの物質を積極的に制御するような食品を創出することである。 この目的を達成するために、本年度は5%ビートファイバー飼料を14日間摂取させたラットから盲腸内容物を回収し、盲腸内容物の有機溶媒抽出画分を薄層クロマトグラフィーの2次元展開によって更に分画した。その結果、7つの主要なスポットを検出した。発酵によって産出され、大腸に有益な生理作用をもたらすと知られている短鎖脂肪酸でないことは確認している。現在は共培養に必要な量を分画するとともに、それぞれの画分の成分特定を試みている。今後盲腸内容物画分とヒト結腸上皮細胞株HCoEpiCを共培養し、ムチン合成酵素発現量を上昇させる物質の特定に挑む。また、本年度に実施できなかったビートファイバー摂取ラットの盲腸内容物から菌を採取し、ヒト結腸上皮細胞株HCoEpiCと共培養してムチン合成酵素発現量を上昇させる菌の特定も試みる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は5%ビートファイバー飼料を14日間摂取させたラットから盲腸内容物を回収し、等量の蒸留水で希釈し、37℃で1時間インキュベートした。これに内容物と等量のヘキサンを加え37℃で1時間インキュベートした。これを3度繰り返し、ヘキサン抽出画分を得た。続いて水層に内容物と等量の酢酸エチルを加え37℃で1時間インキュベートした。これを3度繰り返し、酢酸エチル抽出画分を得た。続いて水層に内容物と等量のブタノールを加え37℃で1時間インキュベートした。これを3度繰り返し、ブタノール抽出画分を得た。残りの水層は3000 xgで30分間遠心分離し、水抽出画分と残渣分けた。盲腸内容物の有機溶媒抽出画分を薄層クロマトグラフィーの2次元展開によって更に分画した。プレート担体にはシリカゲルを、1次展開溶媒には酢酸エチル/メタノール/28%アンモニア水混液(85:10:2)を、二次展開溶媒にはシクロヘキサン/トルエン/25%アンモニア水混液(65:25:10)を用いた。スポットの検出は紫外線照射(254 nm)、ヨウ素蒸気およびニンヒドリン試薬(60℃, 5min)で順次処理した。その結果、7つの主要なスポットを検出した。発酵によって産出され、大腸に有益な生理作用をもたらすと知られている短鎖脂肪酸でないことは確認している。現在は共培養に必要な量を分画するとともに、それぞれの画分の成分特定を試みている。本年度少し遅れた理由は本年度末に実施予定だったビートファイバー摂取ラットの盲腸内容物から菌とヒト結腸上皮細胞株HCoEpiCとの共培養を行っていないためである。菌とヒト結腸上皮細胞株HCoEpiCとの共培養には多大な時間と試薬が必要となる。しかしながら昨今の移動および活動制限により、充分な研究時間の確保ができない中で、流通が遅れるなどの悪材料が重なった。そのため、実施を断念せざるを得なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
薄層クロマトグラフィーの2次元展開によって細分化された盲腸内容物画分をDMSOで適宜生理的濃度まで希釈し、ヒト結腸上皮細胞株HCoEpiCに暴露させる。5%CO2下37℃で6、12および、24時間培養し、コラゲナーゼ処理を行って細胞を回収する。改変AGPC法によって細胞からmRNAを単離する。rtPCR法でムチン合成酵素(Muc2、Muc3、Muc5Ac)発現量の上昇を確認する。これによって、大腸ムチン合成に有効な画分の特定作業を行う予定である。並行して、6週齢のSD系雄性ラットを用い、AIN93を基本とした標準飼料で14日間飼育する。飲水は抗生物質添加水 (2 mg/mL ネオマイシン、0.5 mg/mL セフォペラゾン、50 units/mL ベンジルペニシリン) を自由飲水させる。飼育開始10日後に新鮮便を回収する。回収した糞便の有機酸量および分解酵素活性を測定し、腸内細菌によるムチン分解がないことを確認する。その後の本飼育期間では対照食または5%ビートファイバー添加食で14日間飼育する。飲水は水道水を自由飲水させる。毎朝今年度選択された菌株を経口投与する (1.8x109 cfu/head/day)。この間、飼料摂取量、体重、糞便量、糞中ムチン量の推移を記録する。最終日に安楽死させ、盲腸を摘出する。盲腸組織は盲腸壁の組織学的観察と上皮組織のムチン合成酵素遺伝子発現量を解析するために用いる。盲腸内容物は植菌した細菌数をqPCR法で測定する。これにより選択された菌の大腸粘液合成促進作用を検証する。
|
Causes of Carryover |
本年度末に実施予定だったビートファイバー摂取ラットの盲腸内容物から菌とヒト結腸上皮細胞株HCoEpiCとの共培養を行っていない。菌とヒト結腸上皮細胞株HCoEpiCとの共培養には多大な時間と試薬が必要となる。しかしながら昨今の移動および活動制限により、充分な研究時間の確保ができない中で、流通が遅れるなどの悪材料が重なった。そのため、本年度中の実施を断念せざるを得なかった。 次年度も実施環境には不安が残る。しかしながら、繰越金を含めて早めに全ての試薬を買い揃えてしまい、断続的に捻出される研究時間で無駄なく遂行できるように支出計画および実施計画を改善する。繰越金はCO2ガス、培養用選択培地、コラゲナーゼ、mRNA抽出試薬の購入に充てる。これらを次年度初期に購入すること、およびヒト結腸上皮細胞株HCoEpiCと共培養する菌種を厳選することによって使わせて頂く費用の無駄を廃し、後れを取り戻す予定である。具体的には使用する選択培地をビフィドバクテリウム属選択培地とラクトバチルス属選択培地に限定し、逆培養した菌株とヒト結腸上皮細胞株HCoEpiCを共培養する。5%CO2下37℃で6、12および、24時間培養し、コラゲナーゼ処理を行って細胞を回収する。改変AGPC法によって細胞からmRNAを単離する。rtPCR法でムチン合成酵素(Muc2、Muc3、Muc5Ac)発現量の上昇を確認する。
|
Research Products
(1 results)