2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K11050
|
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
村上 茂 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (50740990)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 崇志 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (80423119)
宮崎 照雄 東京医科大学, 医学部, 講師 (60532687)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | タウリン / イメージング質量分析 / MALDI-IMS / 筋肉 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
タウリンは体内に存在するアミノ酸誘導体であり、浸透圧調節作用、抗酸化作用、カルシウム調節作用などを介して、生体の恒常性維持において重要な役割を果たしている。ヒトでは体内に体重の0.1%程度のタウリンが存在し、その約70%が筋肉に存在しており、筋収縮や筋肉でのエネルギー産生において役割を担っているほか、筋肉はタウリンの体内プールとなっていると考えられている。これまでの研究から、運動により筋肉からタウリンが血中に放出され、尿中タウリン量も増加することが示されているが、この現象の生理的意義については不明である。本研究の目的は、タウリンがいわゆるマイオカンとして働き、運動時に筋肉から遊離したタウリンが他の臓器機能に影響を与えることにより、運動による全身効果の一部に関与している可能性を検討することである。 1年目の本年度は、運動時の筋肉からのタウリンの遊離(タウリンの減少)を捉えるため、イメージング技術を使用した筋肉でのタウリンの可視化について検討を行った。その結果、マトリックス支援レーザー脱離イオン化イメージング質量分析法(MALDI-IMS)により、ラット筋肉におけるタウリンを可視化に成功した。タウリンのイメージングによる可視化はこれまで報告されておらず、成果は現在投稿準備中である。先行研究の結果と一致し、筋肉においてタウリンは速筋に比べ遅筋に多く存在することを確認した。次に運動による影響を調べるため、トレッドミルにてラットに中程度の運動(20 m/min)を30分から120分負荷し、筋肉中のタウリンを可視化し、半定量的にタウリン量の変化を分析した。ラットヒラメ筋のタウリンは運動後30分から減少し、120分では減少は運動前に比べ有意であった。 以上、ラット筋肉中のタウリンをMALDI-IMSにより可視化し、運動による筋肉タウリンの減少を確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、マウス筋芽細胞(C2C12)を用い、in vitroにて細胞の電気刺激による評価を行う予定であったが、安定した評価系の作製が難しいこと、筋肉の電気刺激が運動のモデルとして妥当かどうか等の点から試験計画を見直し、細胞での評価の実施は中止した。 In vivo評価では、筋肉におけるタウリンの組織分布や量的変化を捉えるため、新たな方法としてマトリックス支援レーザー脱離イオン化イメージング質量分析法(MALDI-IMS)を検討し、ラット筋肉におけるタウリンを可視化できることを明らかにした。今後、HPLCなどによる定量法を併せて、本法による筋肉中タウリンの動態評価に使用していく予定である。 動物による評価として、タウリントランスポーター欠損マウスの利用を予定しているが、本学における動物飼育設備の状況や欠損マウスの数の確保等の問題があり、現在のところ、実施できる目処は立っていない。代替実験として薬物によるタウリン枯渇動物の作製を考えており、β-アラニンを投与し、組織タウリン量が減少した動物での評価を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討により、運動による筋肉からのタウリンの遊離(筋肉からのタウリンの減少)を、イメージング質量分析法にて確認した。今後、筋肉から遊離したタウリンが肝臓や脂肪組織に到達し、エネルギー産生や糖代謝に影響を与えているかどうかを証明する。具体的には、ラットに運動を負荷し筋肉のタウリンが減少した状態で、HPLCなどを使用し主要臓器のタウリン量を測定する。また、臓器のエネルギー産生や糖代謝に関係する遺伝子の発現を調べ、タウリンの関与の可能性について検討を加える。 さらに、タウリンを2週間程度投与し、組織中のタウリンが増加した動物における運動の影響、あるいはβ-アラニンを投与し組織タウリン量を減少させた動物における運動の影響を調べ、タウリンがマイオカインとして作用する可能性を検討していく。
|
Causes of Carryover |
当初は、動物の運動実験を福井県立大学にて実施する予定で、トレッドミル購入費用として120万円を計上していた。しかし、実験場所の確保ができない等、本学での運動負荷実験の実施が難しくなったことから、トレッドミルを用いた試験は、研究分担者(東京医大、宮崎照雄)が実施した。また、マウス筋芽細胞を用いた試験を計画し、この試験に必要な備品として細胞用電気刺激発生装置の購入を予定していたが、安定した評価系の作製が難しいこと、筋肉の電気刺激が運動のモデルとして妥当かどうか等の点から、細胞での評価の実施は中止したため、本装置の購入(50万円)を見送った。 次年度は、ラットの購入、臓器や血液中のタウリン量をHPLCやイメージング質量分析法により測定するための試薬、また臓器のエネルギー産生などに関連する遺伝子発現や酵素活性を調べるための試薬の購入を予定している。
|
Research Products
(2 results)