2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanisms of age-related muscle atrophy and development of novel therapies for sarcopenia
Project/Area Number |
18K11067
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
本橋 紀夫 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部, 科研費研究員 (50532727)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 筋線維タイプ / 筋幹細胞 / 加齢 / 筋疾患 / 萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋は可塑性(肥大・萎縮)と共に、筋線維タイプ(遅筋・速筋)および代謝変換能(酸化系・解糖系)を有する。各種運動や疾患等に伴い筋肥大・萎縮が惹き起こされる事がよく知られるが、その過程で様々な筋線維タイプ変化も同時に生じる。しかし、この詳細なメカニズムと生理的意義は不明な点が多い。 これまでに、全ての筋線維タイプを蛍光蛋白で識別できるマウスを作製し、そのマウス由来筋管細胞を用いて筋線維タイプ変換誘導能を持つ生体内物質・薬剤等を網羅的に探索し、遅筋線維(Type I)或は速筋線維(Type IIB)を誘導する複数の新規因子を同定する事ができた。その因子の1つであるCCL19は、培養条件下で速筋線維から遅筋線維に誘導し、且つ代謝機能を低下させる事をIn vitroで示した。 令和元年度は、筋線維タイプ変換誘導因子であるCCL19が、加齢性筋萎縮の原因であるか否かをIn vivoで確認する為、CCL19をマウスに継続的に投与を行った。その結果、遅筋化および筋萎縮を認め、且つSDHおよびNADH活性の低下、あるいはミトコンドリア代謝関連遺伝子の変化を誘導した。次に筋線維タイプ変換に関わるシグナル経路を解明する為、筋線維タイプ変化を誘導するSirt1を筋特異的に欠損したマウスに対しCCL19を投与した結果、骨格筋量・筋線維タイプには影響を与えず、CCL19はSirt1を介して遅筋化および筋萎縮を誘導している事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は, CCL19が加齢性筋萎縮の原因であるか否かを確かめる事を目標とし, CCL19をマウスに継続投与した. その結果, CCL19によって遅筋化・筋萎縮が誘導され, 更にミトコンドリア代謝関連遺伝子群の低下も認めた. これは加齢時に認められる筋症状と類似していた. 同時に, CCL19による筋線維タイプ変換シグナル経路を同定する為, 筋線維タイプ変換を誘導する遺伝子Sirt-1が筋特異的に欠損したマウス対しCCL19を投与した結果, 筋線維タイプの変化, または筋萎縮は示さず, CCL19による遅筋化はSirt-1の発現を介した経路である事がわかった. 更に現在ではCCL19によるSirt1活性化を制御するシグナル経路を解明する為,CCL19で処理した筋管を用いて遺伝子発現解析を行っている. 以上の通り, 研究計画はおおむね予定通り進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から, CCL19は加齢性筋萎縮の要因の一つである可能性が考えられた. そこで令和2年度は, 1)CCL19阻害によって, 加齢性筋萎縮および遅筋化を抑制できるか否かを確かめる, 2)CCL19によるSirt1活性化を制御するシグナル経路を解明する為に網羅的な遺伝子発現解析を行い, 候補因子を同定する. 更に, 3)その制御因子によって筋線維タイプおよび代謝能が変化するか否か, あるいは4)加齢性筋萎縮を抑制できるか否かを明らかにする事を目指す.
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Causes of Carryover |
民間財団から支援を受けている研究内容が、科研費によって遂行される内容と一部重複している箇所が存在していた為、支出の一部を民間財団からの研究助成金で賄った。また職場の異動があった為、支出計画に一部変更が生じ、その結果次年度使用額が生じている。今年度は、遺伝子改変マウスの解析、実験試薬・キット等の購入および学会参加を予定しており、全て科研費から使用する予定である。
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