2018 Fiscal Year Research-status Report
HDLを介した肝内コレステロール搬出に基づく非アルコール性脂肪肝炎の予防戦略
Project/Area Number |
18K11073
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
篠畑 綾子 岡山大学, 保健学研究科, 助教 (70335587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼井 真一 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (50346417)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HDL / コレステロール / 非アルコール脂肪肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,培養肝細胞(ヒト肝がん由来細胞株HepG2)にコレステロール蓄積を誘導する培養条件の探索を主に試み,HepG2細胞におけるHDL生合成がコレステロール蓄積により変動するかどうかを検討した。 1.脂肪酸を培養液に添加する実験では,予想通り,細胞内トリグリセライド蓄積がオレイン酸やパルミチン酸で有意に増加した。コレステロール蓄積は細胞播種時の細胞コンディションの違いによってばらつきが大きく評価が困難であったが,パルミチン酸でわずかな増加傾向が見られた。この培養条件では,細胞培養液内に出現するHDLはいずれの脂肪酸でも減少し,その傾向はオレイン酸で顕著であった。HDLの生合成に深く関与するABCA1蛋白質量をHepG2細胞で分析したところ脂肪酸添加により減少傾向にあり,また,脂肪肝を呈するob/obマウスやdb/dbマウスでもABCA1蛋白質が減少していた。従って脂肪酸添加によるHDLの減少は,ABCA1蛋白の発現と深く関与していることが推測される。いずれの場合も肝内コレステロール蓄積だけでなくトリグリセライド蓄積が有意に起きるため,細胞内コレステロール量に関連してHDLが変動するかどうかの評価は困難であった。 2. ABCA1蛋白の発現調節を担う核内受容体(LXR)のアゴニストを培地に添加すると,培養上清のHDLは増加することが知られており,本研究でも大型HDLが増加していた。HDL増加に伴い,細胞内コレステロール量が減少することを予想していたが変動は認められなかった。 3.LDLや酸化LDLを培地に添加して細胞内コレステロール蓄積の誘導を試みたが,予想に反して細胞内の脂質蓄積量に変動は見られなかった。しかし,酸化LDLの添加により培養上清のHDLが減少する傾向が見られ,肝臓におけるHDL生合成の観点から興味深い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞培養でコレステロール蓄積を誘導する条件の検討に予想よりも時間を要している。また,既報や予想と異なるデータがしばしば得られ,その原因追及にも時間を要しており,やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はHepG2細胞における細胞内コレステロール蓄積がHDL生合成に影響するかどうかを検討した。次年度も引き続き,AML12細胞など他の肝細胞株を使用しての検討を試みることを考えている。また,培養液にHDLやHDLの構成蛋白質(アポA1など)を添加することにより,脂肪酸による細胞内コレステロール蓄積を抑制できるか否かも併せて検討する予定である。さらに当初の研究計画に基づき,ラットを用いた動物実験を開始する予定である。既報を参考に,ラットに脂質組成の異なる飼料を与え肝臓にコレステロール蓄積を誘導することを試みる。予想通りの結果が得られない場合は,疾患モデルなどの他のラットやマウスを利用することを考慮しながら研究を進める。動物からは血液,肝臓等を採取し,血清脂質分析やmRNA発現,蛋白質発現の解析を行い,肝臓のコレステロール蓄積とHDLの量や質との関連を調べていく。
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Causes of Carryover |
コレステロール蓄積の条件検討に時間を要し,当初予定していた試薬等の購入が次年度に持ち越されたため,未使用額が生じた。これは次年度に継続して行う細胞培養実験ならびに新規に行う動物実験の経費に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)