2019 Fiscal Year Research-status Report
キサントフィルの蓄積・分解を調節する代謝機構の解明
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18K11081
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
長尾 昭彦 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (40353958)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アポカロテナール / キサントフィル / ゼアキサンチン / 非対称開裂 / ルテイン |
Outline of Annual Research Achievements |
キサントフィルの主要な代謝反応は,水酸基の酸化反応と炭素骨格の開裂反応と考えられている。昨年度は水酸基の酸化的代謝を解析するため,生成物の立体異性体を分別定量法について検討してきた。本年度は,炭素骨格の開裂代謝として非対称開裂反応について研究を進めた。非対称開裂については遺伝子レベルでは詳細に知られているが,動物組織中で発現していると考えられる非対称開裂酵素の活性は未だに検出されていない。そこで,マウス肝臓を用いて非対称開裂酵素の活性を検出しその性質を調べることを目的とした。 β-カロテン中央開裂酵素活性測定の標準的な反応条件を用いて,Tween40に可溶化したβ-カロテンに対する肝臓ホモジネートの非対称酵素活性の検出を試みた。中央開裂反応産物であるレチナールの生成は認められたが,非対称開裂の反応産物と考えられているβ-アポ-10’-カロテナールの生成は認められなかった.Tween40 の代わりに種々の界面活性剤を用いてβ-カロテンを可溶化して反応に供したところ,特定の界面活性剤を用いた場合にのみβ-アポ-10’-カロテナールの生成を認めた。Tween40を用いて可溶化したβ-クリプトキサンチンを基質として反応液に種々の界面活性剤を加えた場合も同様な結果が得られた。このことから,界面活性剤が直接的に酵素活性に大きく影響を与えることが示唆された。ルテインとゼアキサンチンを基質として用いた場合に,非対称開裂産物と推定されるものが検出された.マウス肝臓ホモジネートはプロビタミンAカロテノイド以外のカロテノイドに対しても非対称開裂活性を持つと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はキンサントフィルの非対称開裂代謝の研究に取り組んだ。マウス肝臓に非対称開裂活性を検出するまでに,試行錯誤を繰り返しかなりの時間を費やした。しかし,その後,反応条件を改良し非対称開裂酵素の性質の解析が可能となるレベルに達した。概ね順調に進んでいるが,ルテインとゼアキサンチンの非対称開裂産物についてはUV-VISスペクトルとHPLCで溶出挙動から推定したものであり,今後,機器分析によって同定する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はキサントフィルの非対称開裂代謝について研究を進めた。非対称開裂酵素に関しては組換え体に発現させた酵素の知見に限られていたが,本研究で初めてマウス肝臓に発現するネイティッブの開裂酵素の活性を検出することに成功した。本酵素は,生体内のカロテノイド蓄積を減じる主要な酵素と考えられヒトにおいては不活性化されていることが示唆されている。カロテノイド代謝上極めて重要な酵素であるが未だにその性質は不明な点が多い。本年度の研究成果を踏まえて,最終年度ではキサントフィルの非対称開裂代謝に焦点をあて,開裂酵素の基本的性状を明らかにするため,次のような研究を進めることとする。 1.ルテインとゼアキサンチンの非対称開裂産物の正確な同定および分析には,標準品を確保し機器分析を行う必要がある。そこで,キサントフィルのオゾン分解処理によって鎖長の異なる開裂産物を大量に調製し,分離精製後,UV-VISスペクトルおよび質量分析によって構造を確定する。これらを標準品として開裂産物の分析に供する。 2.非対称開裂酵素は免疫染色によりミトコンドリアに局在することが報告され,ミトコンドリアの酸化障害を抑制する機能をもつことが示唆されている。しかし,予備実験では非対称開裂酵素活性の細胞内局在性は先行研究の結果とは一致していなかった。そこで,酵素活性の細胞内局在性を明らかにする。 3.非対称開裂酵素は非プロビタミンAカロテノイドを含め広範囲のカロテノイドを基質とすると考えられているが,まとまった知見がない。そこで,同一条件で多様なカロテノイドを反応させ定量的に基質特異性を解析する。また,9,10位の二重結合を開裂すると報告されているが,従来任意の二重結合での開裂代謝(Eccentric Cleavage説)が考えられていた経緯もあることから二重結合の位置特異性を解析する。
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Causes of Carryover |
令和元年度に行った非対称開裂酵素に関する研究では想定より消耗品の使用量が少なく残額が発生した。次年度では開裂産物標準品の調製および質量分析のために使用する。
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