2018 Fiscal Year Research-status Report
食品成分は脂肪組織および膵β細胞の低酸素による機能障害を軽減できるか
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18K11088
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
松永 哲郎 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (10452286)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ピセアタンノール / アディポネクチン / 小胞体ストレス / 炎症性サイトカイン / SIRT1 / ポリフェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、脂肪細胞における低酸素による機能障害の緩和に作用する食品成分の探索を実施した。Piceatannol、resveratrolはポリフェノールの1種で、パッションフルーツやブドウに含まれ、サーチュイン(Sirtuin)遺伝子の1つのSIRT1などを介して、血管弛緩作用、抗酸化作用および抗炎症作用などを有することが報告されている。本年度は、piceatannol、resveratrolが、脂肪細胞の低酸素による炎症性サイトカインの分泌促進や小胞体ストレスの亢進、それに伴うadiponectin分泌低下などに対する効果について検討を行った。 脂肪細胞における低酸素暴露によって、抗炎症性サイトカインであるadiponectinの分泌量は減少し、炎症性サイトカインの1つであるTNF-αの分泌量は増加していた。また、炎症性応答に関連する各種因子(NF-κB、TLR4、PAI-1)や小胞体ストレスに関連する各因子(ATF4、CHOP、XBP-1、ATF6)のmRNA発現量は、低酸素暴露により有意に増加していた。piceatannolを添加することによって、adiponectinの分泌量は回復し、TNF-α分泌量は有意に抑制された。さらに、多くの炎症応答・小胞体ストレス関連遺伝子のmRNA発現量が抑制された。このことから、piceatannolには、脂肪細胞の低酸素状態による炎症応答を抑制する作用があることが示された。さらに、SIRT1のmRNA発現量が、低酸素暴露により有意に低下することも初めて明らかになった。一方で、piceatannol添加によって、SIRT1のmRNA発現の有意な回復は認められなかった。このことから、piceatannolによるadiponectin分泌量の回復や炎症応答の軽減には、SIRT1を介さない経路が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低酸素による脂肪細胞の機能障害を緩和しうる食品由来成分の探索・評価を実施した結果、ピセアタンノールにその効果があることが示された。アディポネクチンの分泌回復と小胞体ストレスの緩和や一部炎症応答の抑制が認められたため、今後、さらなるメカニズムの解明と動物実験による機能性の評価を進めていく予定である。一方で、ピセアタンノールによえう低酸素による機能障害の抑制効果は限定的であり、その効果の度合いも顕著なものではなかったため、さらに効果の高い食品成分のスクリーニングも進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を踏まえ、低酸素による脂肪細胞の機能障害の緩和に効果のある食品成分のスクリーニングと機能解析を引き続き実施する。合わせて、効果のあった食品成分の動物への投与実験を進める。また、膵β細胞の低酸素によるインスリン分泌低下などの機能低下に回復効果を有する食品成分の評価についても脂肪細胞の結果を踏まえて実施していく予定である。
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