2019 Fiscal Year Research-status Report
食品成分は脂肪組織および膵β細胞の低酸素による機能障害を軽減できるか
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18K11088
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
松永 哲郎 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (10452286)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ビタミンE / α-トコフェロール / トコトリエノール / アディポネクチン / 小胞体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ビタミンEの代表的な同族体(α-tocopherol、α-tocotrienol、γ-tocotrienol)が、脂肪細胞の低酸素によるadiponectin分泌低下や炎症応答を抑制しうるか検討した。 3T3-L1脂肪細胞に各ビタミンE(α-tocopherol、α-tocotrienol、γ-tocotrienol)を最終濃度0.2μM、2μM、20μMで添加し、低酸素環境(1%O2)で24時間培養した。その後、培養上清のadiponectin量を測定し、リアルタイムPCR法にて、adiponectin遺伝子や炎症応答に関連する遺伝子(NF-κB)小胞体ストレスに関連する遺伝子(CHOP)のmRNA発現量を測定した。 1%低酸素暴露によるadiponectinの分泌量の低下は、γ-tocotrienolの添加によって回復傾向が認められた。また、adiponectinのmRNA発現量は、いずれのビタミンE同族体の添加でも低酸素暴露と比べて有意に回復または回復傾向が認められた。NF-κBのmRNA発現量については、α-tocopherolおよびα-tocotrienolの添加によって低酸素暴露と比べて有意に抑制されたが、γ-tocotrienolでは有意に高値であった。CHOPのmRNA発現量については、α-tocopherolおよびγ-tocotrienolの添加によって低酸素暴露と比べて有意に抑制されたが、α-tocotrienolでは有意に高値を示した。 これらの結果から、脂肪細胞の低酸素暴露によるadiponectinの分泌低下またはmRNA発現量の低下はビタミンEによって回復することが示唆された。一方、ビタミンEの同族体の種類や添加濃度によって炎症応答や小胞体ストレスに対する作用が異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ビタミンEの各種同族体について、低酸素による脂肪細胞の機能障害への改善効果を検討することができた。この結果をもとに、各同族体に作用機序の違いについてさらに詳しく調べていく予定である。また、生体への効果の違いを動物実験で検証する足がかりが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素状態による脂肪細胞の機能障害の改善効果について、より強い改善の作用を示す食品成分のスクリーニングが必要である。その他のポリフェノール類や脂肪酸に着目している。また、膵β細胞における低酸素下に起因する機能障害(インスリン分泌低下など)に改善効果を示す食品のスクリーニングと解析をより積極的に実施する。
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