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2018 Fiscal Year Research-status Report

脂質スフィンゴミエリンの合成系によって制御される筋肥大の解明と筋肥大促進法の開発

Research Project

Project/Area Number 18K11089
Research InstitutionOkayama University of Science

Principal Investigator

長田 洋輔  岡山理科大学, 理学部, 講師 (50401211)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords骨格筋 / 筋肥大 / スフィンゴミエリン / スフィンゴミエリン合成酵素
Outline of Annual Research Achievements

骨格筋はわれわれが体を動かすために必要な組織であり,加齢に伴う運動機能の低下を防ぐためには骨格筋の再生能と可塑性のメカニズムを解明し,筋量を維持する方法を開発することが有効と考えられる.骨格筋の機能を担う筋線維は多数の筋前駆細胞の融合によって形成され,筋肥大の際には既存の筋線維に新たな筋前駆細胞が融合する.本研究は骨格筋の細胞融合に膜脂質の一種であるスフィンゴミエリンが関与する可能性に注目し,そのメカニズムの解明と,スフィンゴミエリン合成系の操作によって筋肥大の促進を図る方法の開発を目指している.
当年度にはスフィンゴミエリンが関与する筋前駆細胞融合のメカニズムを解明するため,骨格筋細胞株C2C12を用いた解析を行った.スフィンゴミエリンはスフィンゴミエリン合成酵素によって合成される.スフィンゴミエリン合成酵素には細胞内局在の異なるSMS1とSMS2が存在することから,マウスSms1およびSms2の遺伝子クローニングを行い,Tet-ON発現誘導系によってC2C12細胞にSms1あるいはSms2の強制発現を行えるような実験系を構築した.強制発現したSms1はゴルジ体と思われる細胞内局在を示し,Sms2は細胞内に顆粒状に局在すると共に一部は細胞膜に局在した.Sms1あるいはSms2を強制発現した状態でC2C12細胞の筋分化を誘導したところ,通常よりも筋核数の多い巨大な筋管が形成されることが明らかになった.この結果はスフィンゴミエリンが筋細胞の融合に対して促進的に作用することを示唆している.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当年度は,主にマウス筋芽細胞株であるC2C12細胞を用いてスフィンゴミエリン合成酵素による筋形成の調節機構を解明することを目的としていた.C2C12細胞にスフィンゴミエリン合成酵素を強制発現させる実験系を構築することができ,スフィンゴミエリンの強制発現によって巨大な筋管が形成されたことから,当年度の研究は順調に進行したと考える.また,これまでにsiRNAを用いたノックダウンによって筋管形成が抑制されることも明らかにしていたことから,Tet-ON発現誘導系によってSms1あるいはSms2に特異的なmiRNAを強制発現する実験系の構築も開始した.当該miRNA発現ベクターの構築は完了したため,次年度はC2C12細胞の融合においてSms1あるいはSms2が必要となる時期を明らかにすることができると期待している.
筋肥大にはmTOR/S6K依存的シグナル伝達系が関与すると報告されている.スフィンゴミエリンが関与する筋細胞の融合にもmTOR/S6K依存的シグナルが関与する可能性が考えられるため,C2C12細胞を用いてmTOR,S6Kの活性を検出する実験系を検討し,ウェスタンブロット法によってこれらの活性を測定できるようになった.
今後はヒトにおいても同様のメカニズムが働くかどうかを検証する予定があることから,当年度にはヒト不死化筋芽細胞株(Hu5/KD3細胞)を入手し,その基本的性質および培養方法について検討を行った.次年度にはHu5/KD3細胞を用いた解析を始める予定である.
※Hu5/KD3細胞は橋本有弘先生(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)から分与していただきました.

Strategy for Future Research Activity

今後はスフィンゴミエリンが関与する筋分化のメカニズムを調べる.Sms1あるいはSms2の強制発現による影響が筋細胞の増殖,分化,融合のどの段階に現れたのかを定量的RT-PCR,ウェスタンブロット,免疫細胞化学的解析によって検証する.特に細胞融合に関与している可能性が高いため,筋前駆細胞の融合に関与することが報告されているホスファチジルセリン,M-カドヘリン,Rac1等について局在変化を中心に解析を行う.
また,C2C12細胞またはHu5/KD3細胞に対して種々の薬剤の添加し,スフィンゴミエリンを免疫細胞化学的に検出することによって,スフィンゴミエリン合成を活性化させる薬剤の探索を行う.
ここまでの実験で得られた結果は,マウス骨格筋から単離・培養した筋サテライト細胞を用いて,より生体内に近い実験系で検証する.初代培養筋細胞では骨格筋に特徴的な横紋構造が形成され,自発的な収縮を開始することを利用して,スフィンゴミエリン合成系の操作によって肥大した筋線維が正常なものと相違ないかについても検証を行う.また,骨格筋のコラゲナーゼ処理によって単離する単一筋線維を利用して,筋線維そのものの肥大や萎縮とスフィンゴミエリン合成系の関係を調べる.
細胞培養系で得られた知見は最終的にはマウスを用いた動物実験で検証することを予定している.マウスの前脛骨筋の筋再生モデルと足底筋の筋肥大モデルにおいてスフィンゴミエリン合成系の促進または阻害をもたらす薬剤を筋肉注射した場合に,筋重量,タンパク質量,筋線維の横断面積およびその数,組織学的特徴に現れる影響を解析する.また,スフィンゴミエリンあるいはその前駆物質をマウス食餌中に添加することによって筋肥大や筋萎縮に影響が見られるかについても検証を行う.

Causes of Carryover

旅費については,出張を予定していた第89回日本動物学会札幌大会が北海道胆振東部地震の影響で中止となったため使用することができなかった.次年度に他の学会のために出張する際の旅費として使用することを計画している.
当年度には計画に従いサーマルサイクラー(Thermo Fisher Scientific, MiniAmp Plus)を購入したが,キャンペーン価格で購入することができたため定価との差額が生じた.次年度にはこのサーマルサイクラーを用いる実験を数多く行うため,PCR試薬のために使用する.本研究で計画している各種の実験では多量の純水が必要となるため,当初は超純水装置の購入を検討していたが,超純水については他研究室の装置を利用させていただけることになった.その一方で次年度以降にはウェスタンブロットなどイオン交換水グレードの純水を多量に必要とする実験を行うため,次年度にカートリッジ純水器を購入する予定である.また,当年度は多額の費用を必要としない遺伝子クローニングと安定発現株の樹立を行ったが,次年度にはこの安定発現株を利用して発現解析実験を行う.その際にはリアルタイムPCRの試薬や,ウェスタンブロット用の抗体,培養液,成長因子・サイトカイン等が必要となるため,これらを購入して研究を実施する.

  • Research Products

    (2 results)

All 2018

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Cell surface flip-flop of phosphatidylserine is critical for PIEZO1-mediated myotube formation2018

    • Author(s)
      Tsuchiya Masaki、Hara Yuji、Okuda Masaki、Itoh Karin、Nishioka Ryotaro、Shiomi Akifumi、Nagao Kohjiro、Mori Masayuki、Mori Yasuo、Ikenouchi Junichi、Suzuki Ryo、Tanaka Motomu、Ohwada Tomohiko、Aoki Junken、Kanagawa Motoi、Toda Tatsushi、Nagata Yosuke、Matsuda Ryoichi、Takayama Yasunori、Tominaga Makoto、Umeda Masato
    • Journal Title

      Nature Communications

      Volume: 9 Pages: 2049

    • DOI

      10.1038/s41467-018-04436-w

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] スフィンゴミエリン合成酵素による筋芽細胞の機能制御2018

    • Author(s)
      長田 洋輔,松田 良一
    • Organizer
      動物学会第89回札幌大会

URL: 

Published: 2019-12-27  

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