2019 Fiscal Year Research-status Report
膜脂質をメディエーターとする水素分子の酸化ストレス応答機構解明
Project/Area Number |
18K11092
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
池谷 真澄 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60644359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 郁朗 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (30343586)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水素 / 脂質 / エンドソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
水素分子(H2)は吸入や飲水等によって体内に取り込むと抗酸化・抗炎症作用を発揮することが知られている。しかしながら、H2はその物理的性質から受容体の存在が予見できない。同様に受容体が無く生理的作用を発揮する物質として吸入麻酔薬があり、脂質膜攪乱説が提唱されている。そこで、脂質膜の変化が起きている可能性を考えた。今までの知見からH2の様々な疾患改善効果が酸化ストレスへの適応応答に由来すると考えられる。更に培養細胞にH2を曝露すると脂質バランスが変動するという予備的知見を得ていた。本研究はH2による脂質変動を介した酸化ストレスに対する適応応答の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。培養細胞にH2を曝露し、脂質の変動をLC-MS解析によって調べると、スフィンゴミエリンなどが変動しているということを去年度報告した。更に詳細に調べていくとH2曝露わずか1時間でホスファチジルセリン(PS)やホスファチジルイノシトール(PI)などがより顕著に増加し、ミトコンドリアに多く含まれるカルジオリピンの種類にも変化が起きていることが分かった。PSやPIが多く含まれるエンドソームの観察を行ったところ、初期エンドソームの増加が確認された。また、H2曝露1時間後の培養細胞のエンドサイトーシス能力を蛍光標識したコレラ毒素の取り込みで調べたところ、抑制されることが明らかになった。 更に同様に脂質膜に作用すると予想される吸入麻酔薬との関係性を調べるためにマウス新生仔にH2とセボフルランを同時に与える実験を行ったところ、幼弱脳の細胞はセボフルラン吸引によって酸化ストレス発生と細胞死を引き起こすことがしられているがH2によって抑制されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は小胞体ストレス応答との関連を探る予定であったが、小胞体ストレス応答との関係は見られなかった。その代わりにエンドソームとの関連性が示唆される非常に興味深いデータを得られた。また次年度のin vivo試験につながる予備データも得られたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①水素曝露による脂質変動、エンドソーム増加、エンドサイトーシス抑制の関係性を明らかにする。具体的には脂質合成酵素のノックダウン実験やエンドサイトーシスの阻害実験を行う。②セボフルラン吸引モデルマウスや培養神経細胞を使った実験によって脂質変動、エンドサイトーシスと酸化ストレス・細胞死シグナル経路の関係性を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
予算執行率は95%とほぼ予定通りである。 繰越金は主に阻害剤やエンドソーム染色剤に使用する。次年度の予算は当初の予定通り使用する。
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