2018 Fiscal Year Research-status Report
Cell-biological analysis of the effects of functional food ingredients on the synthesis and secretion of chylomicon.
Project/Area Number |
18K11110
|
Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
松島 照彦 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (60199792)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 動脈硬化 / カイロミクロン / アポリポ蛋白B48 / 遺伝子発現 / レスベラトロール / ゲニステイン / Caco-2 / 反転腸管 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化性疾患の危険因子である食後高脂血症に対して食品成分が与える効果を解析し、その予防と改善に資することを目的とし、ヒト培養腸管細胞Caco-2および家兎反転腸管系を用いて分泌されたカイロミクロンの脂質、アポリポ蛋白B48(apoB48)および脂質apo蛋白の合成及び分泌に関連した遺伝子の発現を観察した。 脂質ミセルを含む培地で腸管細胞の極性培養およびELISAを用いてのapoB48の測定に成功した。ウコンの成分であるクルクミンの添加により、apoB-48の分泌は濃度依存的な減少が見られた。さらにApoA-Iの増加がみられ、HDLが増加している可能性が示唆された。またreal-time PCRを用いた遺伝子発現の解析では、apobおよびB48mRNA編集酵素apobec1の発現の減少が見られた。脂質ミセルに浸漬した家兎反転腸管を用いて内腔に分泌されるカイロミクロンの測定に成功した。クルクミンおよび赤ワインの成分であるレスベラトロール、大豆の成分であるゲニステインの添加により、apoB48分泌の減少が見られた。レスベラトロールおよびゲニステインの添加において、apob遺伝子発現に減少の傾向がみられた。クルクミンの添加により、aopb、apobec1、a1cf遺伝子発現に有意な減少がみられた。 ApoB-48はカイロミクロン1粒子に対して1分子存在しているため、ApoB-48の減少はカイロミクロンの粒子数の減少を反映している。CurはApoB-48の合成・分泌を遺伝子転写とmRNA編集レベルで抑制し、カイロミクロンレムナント粒子数の減少を介し動脈硬化に対して抑制的に働く可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、細胞、組織、個体のうち、細胞培養系および反転腸管系の2つのレベルでのカイロミクロンの脂質、apoB48およびそれらに関連する遺伝子の発現を観察する系を確立することができた。また、それらの系にいくつかの食品成分を加えることによって、脂質、apoB48分泌および遺伝子発現に影響があることを見いだすことができた。また、その中のいくつかの成分については、apoB48の減少が確認し遺伝子レベルでの機序も解析することができた。このことにより今後の研究の推進に十分な基盤を築くことができ、様々な食品成分の効果を観察することが出来るようになったと考える。またすでに、食後高脂血症に好ましい効果を得たことは、今後の詳細な機序の解明の糸口となると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
①これまで影響を確認できた成分について、用量依存性、有意性、組織細胞毒性などさらに詳細な検討を加え、一方、作用機序について、関連する他の遺伝子の発現についても検討を進める。 ②これまで検討しなかった他の食品成分、例えば茶の成分であるカテキン類や玉葱の成分であるケルセチンなどについて、検討を進める。 ③個体レベルの研究として、家兎に高脂肪食および食品成分を与え、カイロミクロンの脂質、apoB48および腸管や肝臓などにおける遺伝子発現の影響を観察する。大動脈を組織学的に観察し、脂質プラーク、粥状硬化の進展を観察し、食品成分が与える効果を観察する。 ④細胞、組織、個体のレベルの研究を統合して、食品成分が食後高脂血症と動脈硬化に与える影響と、その機序を解析する。
|
Causes of Carryover |
家兎から採集する1検体当たりの腸管の長さを短縮することに成功したので、H30年度に実験に使用する家兎の羽数を減らすことができ、それにより支出額が減少した。H31(R01)年度は、その残額を用いて検体数を増やすことができるので、さらに詳細な検討を行うことができると考える。
|