2019 Fiscal Year Research-status Report

エネルギー代謝変化は心臓のメカノエナジェティクスを変えて心不全治療へと導く

Research Project

Project/Area Number	18K11125
Research Institution	Gifu University
Principal Investigator	小畑孝二岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40378229)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	高木都奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00033358)
Project Period (FY)	2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords	心臓 / エネルギー代謝 / メタボローム / 酸素消費 / 脂肪酸 / 糖尿病 / 収縮性
Outline of Annual Research Achievements	平常時、心臓のエネルギー産生における代謝基質は脂肪酸が70%程度であるが、心不全などの病的心臓では、脂肪酸からグルコースへとその割合が変わることが知られている。本研究の最終目的は、心臓のエネルギー代謝を変えることで、左心室の収縮や拡張といった心機能を調節することはできるか、さらにはエネルギー代謝の異常が心臓病を引き起こす原因となるかを明らかにすることである。そこで、高血圧による圧負荷のみで心不全に至る自然発症高血圧ラット（SHR）と、同系統で肥満と糖尿病を発症するSHR/NDmc-cp（CP）、正常群としてWistar kyotoラット（WKY）の心臓を用いて、左心室の力学的エネルギー学的性質（メカノエナジェティクス）解析およびメタボローム解析を行うことによって、心臓のエネルギー代謝と心機能の調節メカニズムを明らかしようと考えた。さらに近年、心臓のエネルギー代謝の調節に関与することが報告されているスペルミジン（SP）をそれらの病態モデルラットに慢性投与した効果についても検討した。その結果、左心室重量比ではCP+SP群で増大しており、SPは心不全への移行を促進あるいは悪化させている可能性が示唆された。心筋組織のメタボローム解析の結果、ヒートマップでは各群間でかなり違いがみられた。具体的には、中心炭素代謝におけるグルコース代謝経路でGlucose 6-phosphate（G6P）およびFructose 1,6-diphosphate （F1,6P）は、WKY群に比べ、SHR群およびCP群で明らかに増大していることが示された。しかし、データ量が多いため、現在詳細に解析中である。また、これまでの研究成果を学術論文として発表した。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 昨年度は機器購入で実験を始められなかったが、本年度は病態モデルラットを購入し、飼育しながらデータを採取し、心筋組織をメタボローム解析に外注し、その結果を得ることができた。しかし、当初の予定ではラット摘出心臓の血液交叉灌流実験を行った後の心筋組織をメタボローム解析に用いるつもりであったが、その心筋組織ではメタボローム解析に影響が出ると考え、ラット摘出心臓の血液交叉灌流実験を行うことができなかった。メタボローム解析を優先したため、時間的および資金的にラット摘出心臓の血液交叉灌流実験を同時に行うことができなかった。来年度は同様の病態モデルラットの心臓を用いて、ラット摘出心臓の血液交叉灌流実験を行い、心機能とエネルギー代謝の関係性を調べる予定である。
Strategy for Future Research Activity	本年度は、モデル動物の生態的なデータとメタボローム解析に重点を置いたため、ラット摘出心臓の血液交叉灌流実験を行うことができなかった。次年度からは左心室メカノエナジェティクス解析により、収縮性や酸素消費との関わりを検討する。さらに膨大なメタボローム解析の結果の詳細な検討を進める。左心室メカノエナジェティクス解析の結果とメタボローム解析の結果を組み合わせることで、新たな展開が期待できる。さらに、心筋の病理標本、血漿、心筋組織サンプルを用いて、組織学的および生化学的に解析を行うことで、分子レベルでの解析も同時に進めていく予定である。
Causes of Carryover	昨年度は、血流計の故障による想定外の出費のため、計画変更を余儀なくされた。本計画の初年度に行う予定であった病態モデルラットの購入とメタボローム解析の外注である。そこで、本年度は昨年の残金と本年度分を合算し、本来、昨年度に行うはずであった動物購入やメタボローム解析を予算内に収まるように若干、実験計画を変更して行った。そのため、使用計画に誤差が生じていることによって、次年度使用額が生じた。