2022 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー代謝変化は心臓のメカノエナジェティクスを変えて心不全治療へと導く
Project/Area Number |
18K11125
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Research Institution | Gihu University of Medical Science |
Principal Investigator |
小畑 孝二 岐阜医療科学大学, 薬学部, 准教授 (40378229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 都 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00033358)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心機能 / 心不全 / エネルギー代謝 / 収縮効率 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の到達目標は、心臓のエネルギー代謝を変えることで、左心室の収縮や拡張といった心機能を調節することはできるかを明らかにすることで、心臓を強く長持ちさせる方法や心臓病の予防や治療法を提案することである。心臓はATPという化学的エネルギーを、拍動(収縮と弛緩)という機械的エネルギーへと変換している。平常時、心臓のエネルギー産生における代謝基質は脂肪酸が70%程度であるが、心不全などの病的心臓では、脂肪酸からグルコースへとその割合が変わることが知られている。そこで、本研究では、高血圧による圧負荷のみで心不全に至る自然発症高血圧ラット(SHR)と、同系統で肥満と糖尿病を発症するSHR/NDmc-cp(CP)の心臓のエネルギー代謝をメタボローム解析により比較する。また、食品成分として天然のポリアミンであるスペルミジン(SP)をそれらの病態モデルラットに慢性投与した効果についても検討する。それら病態モデルラット群および食品成分投与群の心臓を用いて、ラット摘出心臓の血液交叉灌流実験を行い、左心室メカノエナジェティクス解析を行う。この実験系は、世界でも私しかできない類を見ないユニークな実験方法である。この実験系では心臓の1心拍毎の酸素消費量(VO2)と発生する総機械的エネルギー(PVA)、興奮収縮連関および基礎代謝に要する酸素消費量を算出することができる。またVO2-PVA直線関係の傾きは、心臓の仕事量と酸素消費の割合である収縮効率を示す。よって、本研究により得られた結果は、世界的にも大変貴重であり、また人類の健康に貢献できると確信している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
SHRおよびSHR/NDmc-cp(CP)ラットの体重変化や血圧変化などのデータを採取し、心筋組織をメタボローム解析に外注し、その結果のデータを得ることができた。その結果、左心室重量比ではCP+SP群で増大しており、SPは心不全への移行を促進あるいは悪化させている可能性が示唆された。心筋組織のメタボローム解析の結果、ヒートマップでは各群間でかなり違いがみられた。具体的には、中心炭素代謝におけるグルコース代謝経路でGlucose 6-phosphate(G6P)およびFructose 1,6-diphosphate(F1,6P)は、正常群であるWKY群に比べ、SHR群およびCP群で明らかに増大していることが示された。しかし、データ量が膨大であり、現在詳細に解析中である。また、それらに関わる遺伝子発現やタンパク質量や酵素活性等の生化学的解析や、組織科学的な解析も進めていく予定であった。しかし、申請者の所属先の異動があり、また新型コロナウイルス感染症蔓延のため、様々なことが制限された。研究に関するすべてが思うようにできず、研究費の使用もできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
所属先の異動も徐々に研究環境も整いつつあり、また新型コロナウイルス感染症蔓延からも平素の生活をとる戻しつつあり、研究試薬や動物の入手も行えるようになった。まず、実験動物の購入や試薬の準備等の研究環境の整備を行う。研究環境を整えつつ、メタボローム解析の結果の詳細な検討を行い、高血圧と脂質代謝異常による心臓のエネルギー代謝の変化に関わる代謝系や酵素系を見出す。それによって病態の機序の解明のための注目すべき分子機序を特定する。次にモデル動物を購入し、ラット摘出心臓の血液交叉灌流実験を行う。左心室メカノエナジェティクス解析により、収縮性や酸素消費との関わりを検討する。最終的に、左心室メカノエナジェティクス解析の結果とメタボローム解析の結果を組み合わせることで、新たな展開が開かれることを目指す。さらに、心筋の病理標本、血漿、心筋組織サンプルを用いて、組織学的および生化学的に解析を行うことで、分子レベルでの解析も同時に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究申請の3年目に申請者の所属先の異動があり、所属先が新設ということもあって、動物飼育施設や試薬の購入等から、実験動物指針や試薬管理指針などに至るまで、研究に関わることのほとんどを整備することから始めなければならなかった。加えて、また新型コロナウイルス感染症蔓延のため、様々なことが制限された。研究に関するすべてが思うようにできず、研究費の使用もできなかった。これまで準備に相当な時間を要する状況であったが、研究環境も整いつつあり、新型コロナ感染も落ち着いてきたため、徐々に研究を進めていきたいと考えている。
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