2023 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental Computational Complexity Theory - Its Establishment and Development
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18K11152
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
天野 一幸 群馬大学, 情報学部, 教授 (30282031)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 計算複雑性理論 / 論理回路 / 多数決関数 / 計算機援用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,理論計算機科学分野において挑戦的課題の一つとされる計算複雑さの解析に対して,特に計算機援用型手法によりアプローチするものである.今年度は,特に,3段論理回路の計算複雑さに関して顕著な成果を得ることができた.3段論理回路モデルは,様々な論理関数に対するタイトな複雑さを見積もることのできない最もシンプルなモデルの一つであり,長年に渡り多くの研究が行われてきたものである. 1.3段論理回路で多数決関数を計算する場合,最適な回路は,単調,すなわち,否定リテラルを用いない構造となることが強く予見されていた.本研究を通じて,この予想の反証に繋がり得る回路が存在することを初めて発見した.すなわち,否定リテラルを用いることで,最適と予想される単調3段論理回路のサイズよりも小さなサイズの論理回路を構成し得ることを明らかにした. 2.内積関数を計算する3段論理回路のサイズに対する新たな上界を与えることに成功した.この問題は,特に近年,他の組合わせ論的問題との密接な関係等から,多く研究されるようになった比較的新しい問題である.本研究では,小さな変数の最適な回路の計算機による探索と,理論的一般化を組み合わせた手法により,従来知られていたものより効率的な回路を構成できることを明らかにした. これら2点の成果は,計算機実験による探索と,その理論的一般化という,本研究課題が追求してきた実験計算量理論的アプローチににより初めて可能となったものである.この成果は,国際会議ISAAC 2023の予稿集に掲載済みである. この他にも,長年の未解決問題である接頭反転ソート問題に対する新たな進展や,多項式しきい値関数の構成問題に対する深層学習的手法の適用の可能性等,興味深い幾つかの成果を得ることができた.
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