数理計画問題に内在する大域的性質に基づく多項式時間アルゴリズムの構築

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K11173
• Research Institution: Nihon University
• Principal Investigator: 森山 園子 日本大学, 文理学部, 教授 (20361537)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 数理計画 / 多面体 / マトロイド

Outline of Annual Research Achievements

数理計画問題の解法として単体法[Dantzig(1947)]を起源とするピボットアルゴリズムがある。多項式時間を達成するピボットアルゴリズムの存在解明は数理計画問題における重要な未解決事項である。線形計画問題の一部を多項式回数の反復で解くアルゴリズムの達成[Gaertner(2002)]を機に，申請者はこの成功の核となった数理計画問題に内在する大域的性質に着目し，従来のピボットアルゴリズムが注視する数理計画問題の局所構造からは得られない大域的性質の重要性を明らかにしてきた。本研究では，以下3つの方針に沿って，数理計画問題に内在する大域的性質に基づく多項式時間アルゴリズムの構築を目指している。
(A) 数理計画問題の大域的性質に基づく多項式時間ピボットアルゴリズムの開発
(B) 離散的勾配流によるピボットアルゴリズムの高速化
(C) マトロイドとその表現可能性からみた多面体の離散構造
大域的性質を解明する方針(A)を達成するうえで，数理計画問題の多面体的構造の把握が重要である。2020年度後半より開始した多面体とその計算に関する本の執筆中であるが，2021年度は完成には至らなかった．また，ピボットアルゴリズムの動作を理解するため，線形計画問題を含む線形相補性問題のピボットグラフを研究対象とし，特にサイクルがある場合のグラフの解析をした。ただし，2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大を受け，公私ともに想定外の出来事が重なり，研究計画に遅れが生じている。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い，大学の勤務体制が在宅となったことに加え，子供の数度の休校および出席停止（家族体調不良による出席停止）が重なり，在宅勤務が極めて難しい状況となった。結局は2020年度以上に研究にとれる時間が減り，進捗状況は当初の予定通りには進まなかった。その中でも，2020年度後半から進めていた多面体とその計算に関する本の執筆や線形相補性問題のピボットグラフの性質について研究を進めた。

Strategy for Future Research Activity

2021年度は本の執筆に加え，2020年度に生じた研究の進捗の遅れを取り戻すべく研究を進めたが，研究の遅れを取り戻せておらず，2020年度，2021年度と2年間にわたり計画通りに進められていない。2022年度は最終年度にあたるので，その遅れを少しでも取り戻すべく，当初の計画を変更しつつ進めたい。まず，2021年度に進めた数理計画問題の1つである線形相補性問題のピボットグラフのサイクルがある場合について解析を進め，サイクルのあるグラフからサイクルのあるグラフの構成法を考える。サイクルのあるグラフをピボット遷移する場合は一般的にピボット回数が増えることが知られる。サイクルの有無のみでピボットグラフの性質を考えるのではなく，どのようなサイクルがあるときにピボット遷移回数が増えるのかを解析したい。

Causes of Carryover

新型コロナウイルスの感染拡大により，2019年度末（2019年度は年度末に出張予定）から2020年度，2021年度と予定していた出張がすべて実施できなかったため，3年分に渡る出張費が残っているため。2022年度は可能な限り研究会参加および研究打合せ等で出張を実施する予定である。2022年度の具体的な使用計画を示す。旅費として2つの出張を予定している。2022年7，8月または2023年2，3月に研究打合せのためスイス連邦工科大学の福田公明教授を訪問予定である。また，2022年夏に京都大学数理解析研究所での開催予定の組合せ最適化セミナーが現地開催である場合は，京都にも出張予定である。物品については，現在使用中のノートPCに加えて，タブレットPC（surface）を購入予定である。