2018 Fiscal Year Research-status Report
Efficient optimization method for optimal contribution problems with semi-integer constraints
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18K11176
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 真 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20386824)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 応用数学 / 数理最適化 / 錐最適化 / 育種学 / 種別構成問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
半整数制約付き種別構成問題は、育種学などに表れる最適化を数理モデル化した数理最適化問題であるが、混合整数二次錐計画問題として定式化可能である。しかし、既存手法を単純に適用しても実用的な計算時間では求解が困難であり、錐最適化理論を踏まえた計算手法の開発に対する需要がある。特に半整数制約付きの問題に対する計算手法は多くないこともあり、半整数制約付き種別構成問題に対する効率的な計算手法の構築は種別構成問題だけでなく、他の混合整数計画問題の計算手法確立にもつながると期待できる。 本年度は本研究の初年度にあたり、以下の内容を行った。 1.二次錐分割における線形近似制約では、データの持つ疎性を利用して、計算時間の短縮を行った。二次錐分割に対する線形近似制約は、既にある程度の性能を確かめていたが、育種学に表れる入力行列は非常に多くのゼロを含んでいることから、ゼロ要素を計算から除外して非ゼロ要素のみで計算を行う方法を新規に開発した。これにより、計算時間の短縮を達成し、育種学の10000種程度のデータでは計算時間が30分の1まで短縮されることも確認した。この計算方法は高精度な最適解の求解に対して従来手法よりも有効である。 2. 制約に着目した分離法では、整数制約と二次錐制約を分離し、それぞれを交互に反復計算することで最終的に最適解を得る手法を検討しているが、本年度は一般的な半整数制約ではなく、0または1のみを取るバイナリー整数制約の場合に Bai らの splitting method による数値実験を行った。これにより、反復計算の一種であるsplitting method が生成する点列がどのように最適解に収束するか、また最初の反復にどのような初期条件を設定するべきか、という知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.二次錐の分割による線形近似制約では、n 次元二次錐を n 個の3次元二次錐に分割してから線形近似を行う点が大きな特徴である。従来手法では一反復あたり1個の線形制約しか生成できなかったために、最適解を特定するために必要な線形制約を生成するのに多くの反復が必要であった。本研究の手法では、分割してから線形近似を行っており、各反復で最大 n 個の線形制約が生成され、必要な反復回数の削減に結びついている。さらに、本研究では、n 個の線形制約を生成するときに非ゼロ要素のみを用いて線形制約を生成する手法を開発した。この手法については、生成される線形制約に含まれる非ゼロ要素の数は、その生成に利用した非ゼロ要素の数で抑えられる、という数学的特徴を持っており、この特徴の理論的解析を行った。また、直交射影を採用することで、従来の線形近似制約がもつ全要素が非ゼロという非効率性の回避を行っている。 2. 半整数制約付き種別構成問題に関するデータの生成方法を確認した。特に、育種学のデータについては、どのような特徴を数理モデルに定式化するべきか、また、その特徴を計算手法にどのように活用するか、検討を行った。 3. 錐制約と整数制約の交互反復計算については数値実験を行っているが、まだ半整数制約付き問題に対しては適用を行っておらず、今後の数値実験で進めていく予定である。また、これまでの数値実験で得られた結果の一部には、Bai らの splitting method における最適解への収束に関する理論的解析では扱えない部分があることも確認しており、数学的な性質の特定を進めている。 以上の点から、「錐制約と整数制約の交互反復計算」については検討すべき課題も残っているが、「二次錐の分割による線形近似制約」では一定の成果を上げているため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「二次錐の分割による線形近似制約」については、2019年8月にベルリンで開催予定のICCOPT 2019 に参加して発表を行う予定である。この発表の質疑応答などからフィードバックを得られた場合、計算手法に反映させる。改良した計算手法については、ソフトウェアとしてパッケージ化を行い、ホームページへの掲載など公開も順次進めることとする。 また、通常の種別構成問題は、最大化するべき目的関数が線形関数であり、遺伝子の多様性を表す二次錐制約式を持っている。ここで、目的関数と制約式を入れ替え、目的関数に二次錐の数学的構造を入れ、制約に線形関数を入れる子問題を利用して、全体としては二分法による最適値の探索を行う、という計算手法も考えられる。この計算手法に対して、線形近似制約がどのように活用できるか、も計算効率の向上のために検討すべき内容の一つである。 2. 「錐制約と整数制約の交互反復計算」については、まずは整備した半整数制約付き問題のデータに対して数値実験を行い、Bai らの splitting method の方法について数学的性質への考察を深める。特に、Baiらの方法では生成される点列が適切な条件を満たさない場合があり、この部分に着目する。 また、バイナリー整数制約問題の場合は、短時間で良質な解を構築できる手法として steep ascent methodを開発してきた。今後は、steep ascent methodを半整数制約も扱えるように一部を拡張し、splitting method との連携を考える。Bai らの方法の理論的解析では Robinson 条件が基礎となっているため、steep ascent method と Robinson 条件の関係性も理論的に捉え、効率的な計算手法の構築を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は数値計算用のPC購入などに関する物品使用額を想定していた金額より抑えることができた。残額については、次年度に購入する予定である計算サーバーの性能強化などに充てる予定である。
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Research Products
(6 results)