2019 Fiscal Year Research-status Report
Efficient optimization method for optimal contribution problems with semi-integer constraints
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18K11176
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 真 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20386824)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 応用数学 / 数理最適化 / 錐最適化 / 育種学 / 種別構成問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
半整数制約付き種別構成問題は、育種学や金融工学などに現れる数理最適化問題の一種である。育種学では、数千種の遺伝子型を組み合わせて樹木園を構成するときに、利益を最大化するような遺伝子型の割合を決定することが望ましいが、似通った遺伝子型の割合が過度になると遺伝子の多様性が失われ、長期的な利益が低減してしまう。したがって、遺伝子の多様性を維持する制約が必要であるが、この制約は数学的には二次錐制約となるため、二次錐計画問題として定式化可能である。一方で、実用的にはある程度の割合が既に決まっている状況で遺伝子型の割合をさらに追加する場合には、追加する量には下限が設定されていることがあり、そのような下限を数学的に表現できる半整数制約を扱えることが望ましいとされている。本研究では、これらの要素によって定式化される半整数制約付き種別構成問題に対する高速な数値解法の構築を行っており、2019年度は以下の内容を行った。 1.二次錐分割手法を実装し、数値実験を行った。一般のn次元二次錐をn個の3次元二次錐に分割して計算を行っている。 2.育種学に関するデータの一部を整備して公開した (https://github.com/makoto-yamashita/OpSel.jl)。これにより、他の研究者も育種学のデータを利用して数値実験を行うことが可能である。また、育種学のデータでは分子血縁行列は密行列になるが、逆行列では疎行列である、という性質があり、高速な数値解法を構築するうえでは重要な性質であるが、この疎行列をデータから計算するルーチンについても一部を公開している。 3.対数行列式つき半正定値計画問題に対して双対問題の視点から最適化するアルゴリズムを構築した。従来手法では3重ループによるアルゴリズムが必要であったが、それを1重ループにしたことで簡単な構造のアルゴリズムでの求解を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二次錐分割手法については、半正整数制約条件を付加した場合の予備実験の段階ではCPLEXよりも短時間で計算可能であり、十分に性能を発揮しつつある。特に、二次錐を複数の小さい錐に分割したことにより、同時に複数の切除平面を構築することが可能になったことが計算時間の短縮につながっていると考えられる。また、一部の切除平面が本来は不要であるものの数値誤差の影響により計算に追加されてしまっていたため、適宜パラメータを調節して、これらの切除平面を除外するように修正を行った。 次に、計算過程に現れる混合整数計画問題を求解するソルバーについては、CPLEXだけでなくCBCを用いての数値実験も行っている。CBCについては、CPLEXよりも性能が劣る場面も見受けられるものの、フリーソフトであることから育種学など数理最適化を専門としない研究者や実務者には幅広く利用してもらえる可能性をふまえて数値実験に取り入れている。 また、Mullinと BelottiはOuter Approximation は二次錐の劣勾配に基づく切除平面を用いた計算方法を提案しているが、本研究でも上記の二次錐分割で得られる切除平面と劣勾配による切除平面と組み合わせた場合の効果も予備実験で測定している。 一方で、錐分割手法とは別に、Baiらのsplitting method をベースに反復計算手法も検討した。Baiらの理論的解析では、点列が収束すればRobinson条件など最適性条件を満たす解が得られることになっているが、育種学のデータでは最適解への十分な収束が得られないことを数値的に確認した。 以上をふまえて、本格的な数値実験を行う必要があるものの、錐分割手法では構築したアルゴリズムがCPLEXよりも高速になっており、「おおむね順調に推移している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.まずは、計算対象となる遺伝子型の種類数が異なるデータを複数生成することにより、数値実験を通して計算時間を確認する。特に、Outer Approximationの併用により、計算時間がどの程度短縮されるか、効果を確認する。予備実験ではOuter Approximationの計算の一部はCPLEXとCBCで異なる結果が算出されており、数値誤差の影響がCBCの計算では残っていると考えられる。そのような場合に、計算対象とする切除平面を調整するなどの修正を行う。また、錐分割手法で得られる切除平面とOuter Approximationで得られる切除平面が似たような平面になる場合があり得るため、重複する切除平面の除外などは計算効率の向上につながると考えられる。 2.育種学などでは、特定の個体およびそれらの子孫の遺伝子を計算対象から除外した場合に最適解にどのような影響が表れるかも重要な要素と考えられるため、得られる最適解の性質についても順次確認を行うこととする。また、特定の遺伝子系統がなくなった場合に、分子血縁行列の逆行列における疎性も変更になるため、錐分割手法で用いている切除平面についても計算コストが高くなると考えられる。集団の有効サイズという視点では、半整数制約付き種別構成問題の数理最適化問題としての実行可能集合の大きさにより、ある程度のサイズによっては実行可能解が極めて少なくなる場合もあり、数値実験を通してどのような変化が現れるかを検討する必要がある。 以上のように数値実験を中心として研究内容を推進し、数値結果などをまとめて学術雑誌へと投稿をする。また、上記の GiuHub のページにおいて、これらの改良を加えた計算方法をフリーソフトとして公開できるようにデータも含めて整備を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度に国際会議のSIAM Optimization および IFORSが予定されており、これらで成果発表するために、旅費として2019年度から2020年度に繰り越しを行った。しかし、この2つの国際会議は COVID-19 の影響により延期・キャンセルとなっている。 これらの国際会議が2020年度後半に開催される場合には、残額は旅費として利用することとする。 一方で、これらの国際会議が開催中止になった場合には、Linux サーバーなどを購入して、数値実験環境を増強する。
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Remarks |
Opsel.jl では育種学における種別構成問題のデータを公開している。また、データから最適解を得る計算ルーチンについても提供している。
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Research Products
(9 results)