2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K11214
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
平田 博章 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 准教授 (90273549)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布目 淳 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 准教授 (60335320)
柴山 潔 京都情報大学院大学, その他の研究科, 教授 (70127091)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 計算機システム / ハイパフォーマンスコンピューティング / スレッドレベル並列処理 / 投機実行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、スレッドレベルの並列投機実行方式に関してスレッド間の依存関係を除去する研究と、高速なトランザクショナルメモリを実現する研究とから着想した「投機メモリ」という概念に関する発展的な研究計画である。並列性抽出の機会を拡大できる可能性を学術的な見地で明らかにし、投機メモリの実現方式の探求を通して、スレッドレベルの並列投機実行技術を確立することを目的とする。これまでは並列化不可能(静的に解析すること自体が不可能)と諦められていたプログラムを並列化する点で革新的であり、また、従来のようにハードウェアのみで投機実行を制御するのではなく、ソフトウェア機能も活用して大規模な投機実行を可能にする点で独自性が高い。本研究で確立する並列化技術は広く一般のプログラムに対して適用が可能であり、例えば、ビッグデータの分野にも効果的に活用できる。そのため、他の広い学術領域の研究も加速することができる点で、意義・有用性は大きい。 本年度は、まず、投機メモリを実現するための全体的なアーキテクチャ設計を行った。予備実験として、投機実行の成功率と依存解析オーバヘッドとの関係について、ソフトウェアのみで実装した投機メモリのプロトタイプを用いて評価を行ない、これを基に、投機メモリのデザインスペース(設計において考えられる選択肢の範囲)を明らかにし、投機メモリの実現方式におけるハードウェア・ソフトウェアの詳細な機能分担を決定した。さらに、この概略設計に基づいて、投機メモリのハードウェア機能および投機メモリ用ライブラリの設計・開発に着手した。 また、上記の予備評価の過程で、ビッグデータの分野で用いられるk-D木の処理を、投機メモリを用いることで高速化できることが示せた。今研究計画終了時の投機メモリを用いた場合には、さらに性能を改善できることが期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定した通りの進度で研究が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
投機メモリの概略設計に基づいて、投機メモリのハードウェア機能を設計する。ただし、実際にハードウェアを設計するのではなく、ここでの設計結果は以下のシミュレータ内の機能モジュールとして実装する。 また、投機メモリのハードウェア機構を利用するためのソフトウェアライブラリを開発する。ハードウェア機能を実現する機能モジュールとこのソフトウェアライブラリとにより、投機メモリを実現する仮想システムが完成する。 さらに、その仮想システムを用いて投機メモリの性能評価を行うためのシミュレータを開発する。このシミュレータは、マルチプロセッサ上でのマルチスレッドプログラムの実行時間をマシンサイクル単位で計測するものであり、投機メモリの主機能をハードウェアで実現した場合の時間性能を正確に予測することを可能にする。 最後に、このシミュレータを用いて、種々のベンチマーク用プログラムを実行し、投機メモリシステムの性能評価を行う。 以上により、投機メモリの有効性を明らかにするとともに、さらなる並列投機実行の可能性の有無や指針を得るための学術的検討を行う。
|
Causes of Carryover |
平成30年度に行なった予備実験の経験を活かし、本研究の研究環境整備を変更することにした。つまり、平成31年度に購入予定であった1台の高性能サーバを用いるよりも、そのサーバよりは性能が劣っても、サーバ台数を増やす方が研究の進捗がはかどり、より有益な成果を得ることが期待できることがわかった。そこで、意図的に平成30年度の使用額を減らし、その分の予算を平成31年度のサーバ購入費に充てることとする。
|
Research Products
(4 results)