2018 Fiscal Year Research-status Report
複数の発光ピーク波長を持つガラス蛍光体の開発と人工物メトリクスへの応用
Project/Area Number |
18K11302
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
藤川 真樹 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (20594716)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人工物メトリクス / ガラス蛍光体 / 複数の特徴情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,マルチモーダル人工物メトリクスをセラミックス製品に適用し,複数の光学的な特徴情報を製品から抽出する方法を研究している.今年度は,着色の少なく透明度が高いガラス蛍光体が試作できた.
ガラス蛍光体は,母体ガラスと希土類酸化物によって形成される.希土類酸化物には希土類に由来する着色が見られることから,着色が少なく透明度が高いガラス蛍光体を開発するためには,着色度合いが低く透明度が高い母体ガラスを開発する必要がある.本研究では,母体ガラスの組成を見直した.修飾酸化物の粉体が白色で,融点が1400度以下という2つの条件を満たす5つの酸化物(二酸化ゲルマニウム,酸化テルル,酸化アンチモン,酸化モリブデン,炭酸リチウム)について,組み合わせを変えて母体ガラスを試作したところ,75 GeO2 - 25 Li2CO3 という組み合わせが最適となった.
上記の母体ガラスと,2種類の希土類酸化物(酸化イッテルビウム,酸化エルビウム)の混合物を溶融することにより,ガラス蛍光体を作製する.これは,前者が励起光(980 nm)を吸収しながら,これを励起エネルギーとしてエルビウムイオンに伝達する働きを持ち,エルビウムイオンは可視光帯域において赤色と緑色の発光を示し,近赤外線帯域(1500 nm)においても発光を示すためである.実験では,酸化イッテルビウムと酸化エルビウムの比率を変えたガラス蛍光体を試作した.その結果,3.0 Yb2O3 - 0.13 Er2O3 という比率を持つガラス蛍光体が,各帯域において強い発光を示した.当該蛍光体は,励起光が照射される場所において観測できる色相(可視光帯域)と発光強度(可視光帯域,近赤外線帯域)に違いをもたらす.当該蛍光体が添加された製品からは「発光を撮影した画像」という特徴情報に加えて,「発光強度とその比率」という特徴情報が抽出される可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究期間は3年間であるが,計画では1年~1.5年で目標とするガラス蛍光体の作製を,次の1~1.5年で「セラミックス製品への焼き付け」,「複数の特徴情報の抽出」,「ガラス蛍光体の視認困難性の確認」を,それぞれ実施する予定であった.最初の1年間で,目標とするガラス蛍光体の作製ができたことから,ほぼ計画通りに進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年4月1日に,本研究の連携研究者である渕真悟教授(本研究の申請時には准教授)が,急性クモ膜下出血により急逝された.このため,当人と直接連携して研究を推進することが出来なくなったことをはじめに報告する.一方で,渕教授の研究室には七井靖助教が在籍されている.七井助教は,本研究の内容を十分に理解されており,これまでの研究活動をサポートいただいていることから,今後は,七井助教と連携して研究を進める予定である.
2019年度は,前年度に作製したガラス蛍光体を多めに作製したあと,当該蛍光体の粉末を白色の陶器皿の表面に焼き付ける.次に,励起光(980 nm)を照射し,当該光によって発光が観測されている部分を可視光カメラおよび近赤外線カメラを用いて撮影する.これにより,「発光を撮影した画像」を特徴情報として抽出できることを確認する.一方で,当該部分について分光検出器を用いて発光スペクトルを測定することで,「発光強度とその比率」という特徴情報が抽出できることを確認する.
ガラス蛍光体の粉末を溶着させたとしても,セラミックス製品の意匠が損なわれないことを確かめるために,ガラス蛍光体の視認困難性を確かめる.具体的には,30人程度の被験者に対して,ガラス蛍光体の粉末を溶着させた陶器皿とそうでない陶器皿を提示し,当該粉末が溶着されている陶器皿を選択させるものである.正答率が低いことを確かめることで,視認困難性があるものと判断する.
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