2018 Fiscal Year Research-status Report
ディープラーニングに対する電子透かし埋め込みに関する研究
Project/Area Number |
18K11309
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
酒澤 茂之 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (80530823)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ディープラーニング / 著作権保護 / 電子透かし / 視覚的検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、学習済みディープラーニング(深層学習)モデルの無断利用を防ぐために、その所有権を明らかにする技術手段として「電子透かし」のモデル内への埋め込みに取り組んでいる。深層学習モデル内のフィルタ係数群に対して、本来のタスクに影響を与えないように改変を加え、それらを検出することで所有権を示すものである。研究内容として、(1)畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を対象としたパラメータ検証、(2)電子透かし攻撃の脅威評価、(3)対象とするニューラルネットワークの種類の拡張、(4)プロトタイプソフトの公開、を挙げている。 2018年度は、まず、(2)の脅威評価を行う上で基本となる要件分析を行った。従来からのマルチメディアコンテンツに対する電子透かし攻撃手法を参照しつつ、深層学習モデルに対する誤答誘導やそのためのモデル改変技術等を広く文献調査し、映像情報メディア学会2018年度年次大会で発表を行った。 また、その調査によって、深層学習モデルへの電子透かし埋め込み技術の研究が急速に進展していることも判明した。それらの研究のいずれも、深層学習モデル内のフィルタ係数群は観測できない”black-box”が前提となっており、当初の本研究の前提であった”white-box”とは異なる、新たなトレンドが形成されつつある。そこで、本研究においても、並行して”black-box”型への取り組みを行うこととした。 画像分類向け深層学習CNNモデルに対して、電子透かし用の特別な画像を大量に用いて、学習を通して埋め込みを行い、検出時にも複数の画像を用いて統計的な検出を行う手法を考案した。特に、検出結果を視覚化する工夫を加えたことで、企業ロゴなどの直観的な情報として復号できるようにしたことが大きな特徴である。実験により有効性を確認し、IEEE国際学会MIPR2019に採録され、発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(2)の脅威評価については、基本となる調査とそのまとめや考察を学会発表しており、順調に進んでいる。(1)については、当初計画の”white-box”型での検証よりも、新たに”black-box”型での方式考案を優先して進めた。このため検証部分についての研究は遅れている一方で、新たな視覚的な電子透かしの検出方式は国際学会での採録を達成しており、外部発表面での計画を前倒しする成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の研究題目である「ディープラーニングに対する電子透かし埋め込みに関する研究」の枠内で、世界的な研究のトレンドを踏まえて研究の重点をシフトさせることとする。具体的には、“white-box”型のディープラーニング電子透かしについては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を中心とした評価と検証に規模を縮小する。一方で、現在の研究トレンドである”black-box”型については、2018年度に考案した統計的かつ視覚的な検出が可能な電子透かし技術に注力し、埋め込める情報の拡張や攻撃に対する耐性の検証を進めることとする。そして、最終年度には、当初の計画通り、プロトタイプソフトウェアの公開まで達成する予定である。
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Causes of Carryover |
効率的な出張により、旅費支出を抑えることができたため。 2019年度では、その分を計算機資源の調達に充当し、考案方式のさらに迅速な実験と評価に資することとする。
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