2020 Fiscal Year Research-status Report
PET/CT/MRIによるがん自動診断システムと陽性判定データベースの構築
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18K11319
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
有澤 博 横浜市立大学, 医学研究科, 客員教授 (10092636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船越 健悟 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (60291572)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | データベース関連 / マルチメディア情報処理 / 医学画像診断 / 医療診断支援データベース / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんは高齢者では死亡原因の半数近くを占めているが、一方最近の医療技術では発見が早ければ治癒率は著しく改善されている。がん発見のために多くの方法が研究されているが、その中で一度の検査で全身からあらゆる種類のがんを位置情報も含めて検出できるという点で、CT、MRI、PET等による医療画像診断は最も有効と言われている。ところが画像を読み解く専門医(読影医)の数は現在でも不足気味であり、今後の画像の多様化や画質精細化に対しても不安が残る。最近AI(Deep Learning)を用いた診断手法が注目されているが、全身に対する診断を行うには、膨大な数の症例、しかも非常に多岐にわたる「異常」の例をあつめなければならず、現実的ではないと思われる。一方計算機による自動診断では、これまでいろいろな試みがなされたにも拘らず、全身画像からの全タイプのがん診断に対しては、現れる症状の多様性や判断ロジックの複雑性から汎用性の高い成果は得られていない。申請者らは既に読影者のロジック解析を基にPET-CT画像を用いた上半身(頭頸部と胸腔)については良好な成績を持つ自動診断アルゴリズムを開発済である。本研究では、この成果を基に、全身を対象としCTやMRIだけでも自動診断が行える新しい手法の研究開発を目指す。基本的なアイディアは、(広義の)臓器領域の認識については、熟練読影者が行っている大局的な臓器認識法に従い、さらに境界部の精度を上げるために、動的な閾値変更(DTA)法など申請者らが既に提唱した手法を活用する。得られた新アルゴリズムに対し、個々の臓器や部位を3次元的に正確に抽出・特定できているか、実症例(健常例と異常例)を用いて検証し調整する。その上で異常(病変)の有無、種類や程度については、局所的な(臓器ごとの)判断は機械学習と診断データベースによって精度を上げることを試み、これも実症例を用いて検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までに研究開発してきた画像診断アルゴリズムは、PET-CTに偏っていたが、新しい視点の機能開発、すなわちMRI多種画像(T1画像、造影T1画像、T2画像、拡散強調画像など、さらに撮像パラメタの違いによるもの)に拡張することを考えた。共同研究者の群馬県立がんセンター放射線診断部より20症例の全身MRI画像(主にT1と拡散強調画像)を入手し、これに既に開発済みの動的閾値決定法(DTA法)によって大局的な臓器抽領域抽出を行った。さらに、悪性腫瘍などの異常部位を、形態的な異変から抽出することを試みた(PETの診断では放射性ブドウ糖の集積から異常を判断するので、MRIとは根本的に異なる)。その結果、異常部位の判断が困難である症例もある一方で、骨領域では骨の一部が消失してしまう骨腫瘍などに対しても、異常の検出が精度よく行える例があることが分かった。ただし症例数が少ない為、骨腫瘍のすべてのタイプを尽くしたわけではなく、読影者からの聞き取りとアルゴリズムへの反映が十分ではないため、今後確定診断付の症例を増やして、少なくとも骨腫瘍については診断装置(診断エンジン)として実用できるレベルに近づけたいと考えている。それ以外の臓器領域を含む全身がん診断についても、研究予定である。PET-とMRIの組み合わせも考えられるが、両方を同時点撮像する例は非常に少ない。PET-MRI装置も開発されているが、日本の導入数は数台である。さらに異常の種類や程度を、数種の指標によって呈示できないかを検討してきた。しかしながら、想定されていた令和2年度の末において、新型コロナによる医療逼迫の影響を受け、これまで研究協力をいただいてきた医療機関とのやり取りや確定診断付の画像の提供は皆無となり、研究としては中断に近い状態が続いている。幸い研究期間の1年の延長が認められたため、上記の方針を最後まで遂行したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きMRIを中心とした自動診断システム(診断エンジン)の研究開発に注力してゆく。最終的な姿は、PETを含む多種のモダリティを横断的に利用できる医療支援システムであり、診断データベースに蓄積した情報を活用して、がん以外も含む全身からの異常(病変、兆候も含む)、および医師が見落としていたかも知れない異常(病変)候補をくまなく洗いだせることが目標である。今までの研究で、共同研究者側からMRIによる骨腫瘍診断で、異常の痕跡(以前の病変により骨の一部が溶けて消失している例等)を含め骨領域全体として評価できないかとのアイディアが示された。広義の臓器領域ごとに健常から異常(病変)までを複数の指標によって評点化し、かつ直感的なビューワによって新しい情報提供の形態になり得る。3年目の研究に於いては、この点を、MRIの複数画像を用いて、画像領域や撮影プロトコルの標準化、および診断アルゴリズムの精緻化を進めることが予定されていた。まずはMRIによる自動画像診断の有効性を臨床データを元に確立するために、(別時点でも良いので)PET画像を用いて個々の病変、あるいは病変の可能性についての確定診断を出し、両者を比較する。さらに前述の「指標」の探索も進める。病変に結び付く決定的な指標がみつかれば、診断結果の患者を含む「見える化」にも寄与し、その意義は大きい。1,2年目においては、症例データの調査や、医師による確定診断と自動診断の対応付け、さらにアルゴリズムの検定に多くの時間を費やし、一部成果はあっても学会等の発表に至らなかったケースが多かった。3年目においてもこの状態は続いているが、3年目の途中で、MRIは特に画像の種類と差異が多く直感的に読み取りにくいことから、(自動)診断結果の可視化手法の再構築が必要ではないかとの考えに至り、このことも含めて部分的にでも成果を発出していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究分担者ついては、前年度に十分ではなかった症例データの提供に係る打合せ費用に利用したい。共同研究者の群馬県立がんセンターには技術的な討論の回数が当初予定よりさらに必要となるので、次年度に繰越した金額をそれに充てたい。又、追加の症例データの提供もお願いする。
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