2018 Fiscal Year Research-status Report
Development and Diffusion of Access Method in Braille to Electronic Book
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18K11389
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
長岡 英司 筑波技術大学, その他部局等, 名誉教授 (30227996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 愛美 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 講師 (60447258)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 視覚障害 / 電子書籍 / 点字 / 点字ディスプレイ装置 / 自動点字変換 / テキストDAISY |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「視覚障害者が墨字(点字ではない普通の文字)の電子書籍を自動点字変換で迅速かつ確実に読めるようにする方法の基盤の確立と普及」を目的とする。点字は視覚障害者にとって確実な読み取りができる有効な手段であるが、現在の点字での読書は、印刷された図書の場合も、点字ディスプレイ装置を使う場合も、事前に作成された点字データから生成される点字を読むものであり、点字データが短時間では作成できないという大きな問題がある。そこで、視覚障害者が点字を介して墨字の電子書籍に実時間で直接アクセスできる方法の確立と普及が望まれる。2018年度はその実現に向けての準備段階として、現状を的確に把握し、実現の方策を具体化するための、情報収集と実験・聴き取りを実施した。 1.情報収集:点字への逐次自動変換で読書を行う方法の現状(機器、データ形式等)に関する情報を収集し、実用性や発展の可能性などの観点から比較検討して、最も有望な方法を見出した。 2.実験:上記1.で見出した方法について、アクセシビリティ、ユーザビリティ、点字変換精度などを評価するための実験を、視覚障害当事者の協力を得て実施し、現状での問題点等を明らかにした。 3.聴き取り:上記2.の実験に協力した視覚障害当事者を対象に、現状での問題点、改善点などについての意見を聴取し、改善の必要性や方向性、具体的な方策などを明らかにした。 これらの結果から、①点字ディスプレイ装置を介する読書での効率的なヒューマン・インタフェイス体系の確立、②点字への逐次自動変換の精度の向上、を実現するために必要な方策に関する知見が得られた。2019年度は、これらに基づいて改良の方策の具体的な実施に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進捗状況:2018年度は、墨字の電子書籍の逐次自動点字化機能の活用に係る次の二つの要素について、現状の把握は計画通り行うことができたが、予定していた改良の方策の実施には着手できなかった。 1.ヒューマン・インタフェイス:点字ディスプレイ装置を介して墨字データを読む場合の効率的なヒューマン・インタフェイスのあるべき体系を明らかにするために、点字ディスプレイ装置の既存の文章閲覧機能での実験とそれに基づく聴き取りを行い、問題点や改良事項は明らかになったが、具体的な改良の取組の開始までには至らなかった。 2.点字変換機能:点字への逐次自動変換の精度の向上を図るために、既存の点字変換機能における問題点を明らかにし、改良の方策を試行するところまでを予定したが、改良の実施までには至らなかった。 遅れの理由:視覚障害学生の協力による実験と聴き取りを実施するために、筑波技術大学 研究倫理委員会での倫理的観点からの審査を受け、その承認を得る必要があったが、関連情報の収集に時間を要し申請準備が遅れたことと、審査過程が予想より長引いたことから、実務の実施が年度の終わり近くになり、それらの結果に基づいて行う改良の取組に、年度内に着手できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度(2018年度)は、情報収集によって、墨字の電子書籍を逐次自動点字変換で効率よく確実に読むモデルを実現するための基盤として、ケージーエス社製の多目的点字ディスプレイ装置「BMS40」と、電子書籍のデータ形式「テキストDAISY」を選定した。そのうえで、これらについて、ユーザビリティ・アクセシビリティ、点字変換精度を評価するための実験と聴き取りを、視覚障害当事者の協力を得て実施し、現状での問題点や改良の方向性を明らかにした。 2年度以後は、点字ディスプレイ開発会社(ケージーエス)やテキストDAISY製作者(点字図書館関係者)の協力を得て、改良の方策を具体的に実施するとともに、視覚障害当事者による改良結果の評価と調整を行い、完成度の向上を図る。また、改良成果の利用に関する指導法や教材を開発するほか、他のデータ形式への応用の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
<次年度使用額が生じた理由> ①調査経費:当初は「点字ディスプレイ装置を介する逐次自動点字変換のユーザビリティ・アクセシビリティの現状調査」と「自動点字変換の精度の現状調査」を別に行う予定であったが、これを一体的に実施できたために、調査補助委託経費が計画よりも少額になった。さらに、委託先からの納品が年度末間際になったために、支払い手続きが次年度になった。②旅費:「実験や聴き取り調査への協力を依頼した視覚障害者を筑波技術大学内で確保できたこと」、「調査対象の機器やソフトウェアを絞り込んだこと」から、遠方への出張が不要になり、旅費が計画よりも少額になった。③謝金:実験と聴き取り調査の内容を厳選したため、要した時間数が計画よりも少なくなり、協力者への謝金が計画よりも少額になった。 <使用計画> 逐次自動点字化機能の変換精度の向上や、ユーザビリティ・アクセシビリティの改良を図るための開発に、当初の計画よりも多くの予算を費やし、完成度の一層の向上を目指す。
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