2019 Fiscal Year Research-status Report
身体的リズムの同調に着目した生活支援ロボットシステム
Project/Area Number |
18K11393
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
神代 充 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (30314967)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人間ーロボットシステム / 身体的インタラクション / 生活支援ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで力の相互作用による身体的インタラクションの1つとして人間の手を引っ張ったり,押したりする動作について,人間同士での動作解析を行ってきた.そこで,令和元年度はこの解析結果に基づいて,ロボットで人間の手を引っ張る動作を生成する動作モデルを提案した.提案した動作モデルは位置制御型引っ張り動作モデルと時間制御型引っ張り動作モデルの2つである.さらに,これらの動作モデルを上肢ロボットシステムに適用し,人間の手を引っ張る官能評価実験を行った.その結果,両モデルとも人間と同じ特性を持たせた動作が人間に好まれることが示された.このことから,提案モデルにより人間に好まれる引っ張り動作が生成されることが示された. また,令和元年度に購入した視線計測デバイスを用いて,接触を伴った身体的インタラクションである握手に着目し,身体的インタラクションでの注視位置の解析実験を行った.この実験では音声挨拶を伴う人間同士での握手について,注視位置,手部動作,および音声挨拶の発話タイミングについて解析を行った.解析結果から,握手を求める側,応じる側ともに,最初は相手の顔を注視し,手部動作の開始後からは相手の手部を注視するように視線を下ろすことが示された.さらに,握手を求める側の手部動作の開始を基準として,握手に応じる側の手部動作の開始タイミング,注視位置の変更タイミング,および音声挨拶の発話タイミングについて解析を行った.その結果,これらのタイミングには強い相関があることが明らかとなった.そのため,握手を求める側の手部動作に合わせて応じる側の手部動作の開始タイミングを決定することで,注視位置の変更タイミングや音声挨拶の発話タイミングを決定できることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は人間の手を引っ張ったり,押したりする動作の解析結果に基づいて,ロボットで人間の手を引っ張る動作を生成する動作モデルを提案した.さらに,提案した動作モデルを適用した上肢ロボットによる官能評価実験から,人間に好まれる引っ張り動作が生成されることが示された.とくに,能動的にロボットが人間の手を引っ張ることが可能であることが示された.これにより,この動作モデルを応用することで人間に不快感を与えることなく,人間の手を引っ張りながら案内することのできるロボットを実現することが可能となる. 一方で,身体的インタラクションにおける視線についても解析を行った.解析では,接触を伴った身体的インタラクションである握手に着目し,身体的インタラクションでの注視位置について計測を行った.また,注視位置に加え,手部動作,および音声挨拶の発話タイミングについても計測を行った.その結果,握手を求める側の手部動作の開始を基準とした場合,握手に応じる側の手部動作,視線,および音声挨拶のタイミングには強い相関があることが示された.このことから,人間の握手は手部動作,視線,および音声挨拶をリズムに合わせて行っていると考えられる.これにより,この特性を考慮した動作をロボットに生成させることで,リズムの合った(身体的リズムが同調した)握手動作を生成することが可能になる. 以上のように,人間に好まれる動作や人間の身体的リズムに同調した動作を行う生活支援ロボットシステムを構築するための基礎的な研究成果が得られていることから,令和元年度は研究目標をおおむね達成しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで解析を進めてきた握手について,手部動作だけでなく,視線による注視位置の変更を含めた動作モデルの提案を行う.この動作モデルでは,手部動作,音声挨拶,および注視位置の変更をタイミングよく行うことで,人間との身体的リズムの同調を促進させられるようにする.さらに,人間にロボットの視線を提示するための視線提示デバイスを開発し,上肢ロボットと組み合わせることで,人間に視線を提示しながら,握手が行えるロボットシステムを構築する.そして,このロボットシステムを用いて,人間に好まれるロボットの動作特性や視線の提示を方法について検討する.これにより人間との身体的リズムの同調を促進させられる握手動作を実現する.さらに,この動作モデルを用いて,リズムよく人間に物を手渡すことのできる生活支援ロボットシステムを開発する. 一方で,これまでに解析を行ってきた力の相互作用による身体的インタラクションについては,力の加え方や加えるタイミングと人間心理との関係について検討する.そして,この結果に基づいて人間に好まれるタイミングで手を引っ張る動作を生成する動作モデルを提案する.これにより,人間の身体的リズムに合わせて手を引っ張ることを可能にする.さらに,この動作モデルを用いて,人間を案内することのできる生活支援ロボットシステムを開発する.また,この力の相互作用による身体的インタラクションの動作特性はハグ動作にも適用していく. 以上のように,これまでの研究成果を応用することで人間との身体的リズムの同調を促進させるような動作を生成する生活支援ロボットシステムの開発を進めていく予定である.
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Causes of Carryover |
令和元年度に計画していた上肢ロボットの改良に時間を要し,必要な部品を年度内に購入することができなかった.そのため,令和2年度に継続してロボットの改良を行っていくことで,助成金は計画通りに使用する予定である.
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