2018 Fiscal Year Research-status Report
計算機合成ホログラムの圧縮データを用いた三次元動画の高速再生と実時間再生の研究
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18K11399
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
高田 直樹 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (50290713)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 3次元ディスプレイ / 計算機合成ホログラム / 電子ホログラフィ / 圧縮データ / リアルタイム再生 / マルチGPUクラスタ / GPU |
Outline of Annual Research Achievements |
コンピュータで作成された計算機合成ホログラム(CGH)による電子化した三次元動画像再生技術(電子ホログラフィ)は,将来「究極の三次元テレビ」になるものと考えられている.しかし, CGHの計算量が膨大であることをはじめ様々な課題があり未だ実用化されていない.
本研究では,①安価で汎用的なシステムによる三次元動画の実時間再生,②膨大な物体点数からなる三次元物体の再生像の高精細化,そして,③再生された三次元動画像の階調表現性の向上を目的とする.②では,膨大な物体点を分割し,分割した物体のCGHを高速に再生し,残像効果により物体点の補間された元の三次元物体を再生する.③では,再生像の明るさを調整できる重み付きバイナリCGHを複数枚用いて時分割多重表示により実時間動画再生を行なう.①③では,汎用的なネットワークを用いたマルチGPUクラスタシステムを用いる.②では,分割した物体のCGHを補助記憶装置に保存する.そのため,本来の再生速度の分割数倍の速度で再生する必要がある.CGHのデータ量が大きいため,①③ではノード間の転送時間が,そして,②では補助記憶装置からの読み出し時間がボトルネックとなる.そこで,CGHの圧縮処理と圧縮したCGHデータからのCGH画像作成処理をGPUで高速化し,ボトルネックを解消する.
平成30年度において,GPUによるCGHの圧縮処理およびCGHの圧縮データからCGH画像を作成するプログラムを開発した.これを②に適用し,SSDとDMDを用いて90万点からなる三次元物体の高精細な動画を60Hzのリフレッシュレートで再生した.12分割を用いており,1枚のCGHを720Hzのリフレッシュレートで再生することに成功した.また,①③で使用するGPUクラスタシステムのプロトタイプを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度において,GPUによるCGHの圧縮処理,および,CGHの圧縮データからCGH画像を作成するプログラムを開発した.これを,膨大な物体点数からなる三次元物体の高精細な動画再生を実現する時空間分割電子ホログラフィによる高速再生システムに実装した.このシステムでは,補助記憶装置としてSSDを使用し,120HzのリフレッシュレートでフルHD再生の動画像を再生可能なDMDを空間位相変調器として用い,1枚のGPUを搭載した1台のPCで構成される.当初の計画では,1フレームあたり3枚のCGHの動画再生を考えていたが,SSDの読み出し速度が著しく向上したことと,CGHの圧縮データからCGH画像の作成がGPUにより高速化できたことで当初の計画の2倍の性能を達成することができた.また,汎用的なネットワークとしてギガビットイーサネットを用いたマルチGPUクラスタシステムを構築した.しかし,平成30年度に新しいアーキテクチャのGPUが発売されることになり,本研究で構築するシステムで使用するか再検討した.その結果,価格および1台に搭載できるGPUボードの枚数を考え,旧世代のGPU(NVIDIA GeForce GTX 1080 Ti)を用いて構築することにした.構築したクラスタは,13枚のGPUを搭載した5台のPCから構成され,1台のPCに1枚のGPUを搭載したCGH表示ノードと,1台のPCに3枚のGPUを搭載した4台のPCからなるCGH計算ノードから構成される.なお,今回,構築したシステムで性能評価を行なったところ,当初の計画通りの性能を発揮できていることを確認した.今後の研究動向を考え,必要に応じて平成31年度に新しいアーキテクチャのGPUを増強し,さらなる高速化を実現することを検討することにした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に構築したギガビットイーサネットを用いたマルチGPUクラスタ用三次元物体のリアルタイム動画再生プログラムを開発する.CGH計算ノードの各GPUが1枚のCGH計算を担当し,パイプラインアルゴリズムを適用し,三次元物体のリアルタイム動画再生を行なう.なお,ノード間通信には,GPUによるCGHの圧縮処理を実装し,CGHの転送時間のボトルネックを打開する.また,残像効果を計算高速化に用いた時空間分割多重法も適用し,さらなる高速化を実現する. CGH計算重み付きバイナリ計算機合成ホログラム(BW-CGH)をビットプレーンに用いた階調を持つ三次元物体の電子ホログラフィによるリアルタイム動画再生プログラムの開発も行なう.BW-CGHをビットプレーンに使用するため,動画の各フレームにおいて複数枚のBW-CGHの再生が必要になる.そのため,CGHの計算時間および通信量が増える.しかし,ビットプレーンとなるBW-CGH計算において重複した計算が生じる.この重複計算を省いて効率よく計算ができれば,動画の各フレームにおいても1枚のGCH計算時間で済む.プログラムの最適化を行い,効率のよい計算の実現を目指す.ノード間通信には,平成30年度に開発したGPUによるCGHの圧縮処理プログラムを実装するが,それでも通信時間がボトルネックとなる. これまで,高速なネットワークとしてInfiniBandを使用してきたが,InfiniBandよりも10ギガビットイーサネットのほうが価格も格段に安い.また,通信速度10Gbpsのインターネットの光回線サービスも提供され始めており,今後10ギガビットイーサネットは普及していくものと考える.そこで,階調を持つ三次元物体の電子ホログラフィの研究では,マルチGPUクラスタのネットワークに10ギガビットイーサネットを使用する.
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Causes of Carryover |
平成30年度に新しいアーキテクチャのGPUが発売された.しかし,本研究で構築するマルチGPUクラスタに適したGPUボードの発売が遅れていた.旧世代のGPUを購入して構築し、次年度に新しいアーキテクチャのGPUを購入してシステムの増強をすることとした.そのため,光学系の購入も控え,平成30年度の物品購入の費用をできるだけ抑えることとした.次年度に新しいアーキテクチャのGPUおよび光学系を購入する.また,研究成果発表の費用として使用する.
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Research Products
(11 results)