2018 Fiscal Year Research-status Report
実世界の普遍的性質を利用した汎化能力の獲得と柔軟ロボットへの実装
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18K11445
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
伊藤 一之 法政大学, 理工学部, 教授 (90346411)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ソフトロボット / 柔軟ロボット / 汎化 / 多脚ロボット / マニピュレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は,数少ない経験から未知の多数の事象に適用可能な汎化された振る舞いを構成することができる.これは,高等生物だけではなく,小動物や昆虫などの下等生物にもみられる極めて優れた性質であり,従来の工学における「多数の事象から少数の抽象化された事象を抜き出す」という統計学的な枠組みでは説明が不可能な対照的な現象である. この生物の仕組みに注目し,本研究では,「汎化機能を実現しているものは,学習により得られる内部モデルではなく,実世界に最初から存在している普遍的性質である」との仮説をたて,この実世界の普遍的な性質を利用するためのロボットの身体の設計方法,並びに,ロボットが環境に働きかけるなかで,新たな普遍的性質を発見し,状態・行動空間を分化させ,振る舞いの精度を向上させてゆくための発見・学習アルゴリズムの提案を行う。 30年度は,大小さまざまな大きさの物体を同一の動作で把持可能な柔軟マニピュレータの開発,並びに,様々な柱状物を同一の歩行パターンで昇降可能な多脚型ソフトロボットの開発を例に,実世界の普遍的性質の一つである,柔軟な身体の力学的特性を利用した汎化の実現に取り組んだ. 特に,それぞれのロボットに対して,身体の大きさや粘弾性の異なる様々なバージョンのプロトタイプを製作し,実験により,物理特性がどのように汎化を実現しているかについて検討した.その結果,受動的に運動可能な柔軟な身体と,受動的な運動を合目的な運動に導くための力学的拘束とを組み合わせることで,汎化と合目的な運動との両立が可能であることが確かめられた.また,粘弾性の大きさについては,身体のスケールに合わせて適切な大きさに調整する必要があることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定通り,異なるタスクを実現可能な複数のロボットの開発に成功しており,これらの共通点を比較することで,タスクに特有の性質ではなく,タスクから独立した普遍的な性質とは何かを検討することが可能となる. 現在は,身体の大きさや粘弾性の異なる様々なバージョンのプロトタイプを製作し,実験により,物理特性がどのように汎化を実現しているかについて検討を行っている.その結果,受動的に運動可能な柔軟な身体と,受動的な運動を合目的な運動に導くための力学的拘束との組み合わせが必要であることが確認されている.また,粘弾性の大きさについては,身体のスケールに合わせて適切な大きさに調整する必要があることが確認されている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,柱状物を昇降可能なロボットを実現する際に得られた知見を,異なる環境やタスクに対しても適用可能な一般化された設計論としてまとめ,これをもとに,梯子や階段など,異なる環境を昇降可能なロボットを開発することで,その有用性を検証していく予定である.
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも少ない試作回数で,目的としていたロボットの開発が実現できたため,予算に余裕が生じ,次年度への繰り越しとなった. 次年度は,この繰越金を用いて,共同研究先より研究者を招聘するなどして,国際共同研究の推進を予定している.
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Research Products
(11 results)