2019 Fiscal Year Research-status Report
A study on qualitative spatial representation and reasoning system focused on the change of shapes
Project/Area Number |
18K11453
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
高橋 和子 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30330400)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 由行 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (20435655)
増田 佳代 関西学院大学, 理工学部, 教授 (40280416)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 定性空間推論 / 発生生物学 / 状態遷移系 / 論理推論 / トポロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は,発生生物学における器官形成過程を対象とし,そこで頻繁に観測される,凹部の形成,境界線上の接点の生成,分裂といった形状変化を扱う定性空間推論の枠組を構築した.具体的には,球体からはじまり器官として形成されるオブジェクトを2次元平面上に射影し,閉曲線の形状変化としたモデルを生成し,それを表現する記述言語と変化の過程を表現する手法を提案した.この記述言語は極点と曲率に基づくプロセス文法の拡張として定義したものであり,形状の状態遷移と文法の生成規則を対応させて変化の過程を表現するものである.本年度はこの手法を精錬させるために,記述言語の妥当性について2つの側面から検討した. 1つは認知的側面であり,記号表現に対応するモデルの変化と人間が認識する形状変化との整合性である.今回対象とするオブジェクトは境界面が細胞セルがシート状になっておりセル同士の接続関係の変化を考える必要がある.最初はシート厚みを考慮にいれてオブジェクト同士の接続関係の変化を記述する手法を検討した.しかし,詳細な段階ごとの状態変化を定性的に記述するのは難しく,人間の認知としても詳細レベルまでの記述は必ずしも必要ないとの結論になり,比較的抽象度の高いレベルで形状変化を記述することにした.この点に関しては,Bremen 大学の Christian Freksa 教授を招聘しての議論や,国際会議 COSIT での口頭発表を通じて他の研究者からも多くのコメントをもらった. もう1つは数学的側面であり,この記述言語の数学的性質についての考察である.対象オブジェクトは細胞セルがシート状になったものを境界にもつため,モデル上では自己交差のない閉曲線に対応する.与えられた記述言語による表現に対して,自己交差なしの閉曲線が2次元平面上に描けるときの条件および状態遷移規則を適用する際の条件について考察した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の予定の1つとして,状態遷移系の性質の調査や体系の妥当性について数学的側面と認知的側面の双方からの検討をすることになっていた.前者は当初予定していた概念近傍や連続性についての議論よりも記号表現と2次元平面上での図との対応関係の方が重要だと思われるためこちらについての考察を行った.後者は認知的空間推論アプローチの専門家である Freksa 教授をはじめとして他の研究者と議論することで検討した.いずれも新たに着目すべき点が見えたため方法論は異なるが,2つの側面からの検討は行っている.また,この結果をふまえて状態遷移規則に条件を不可することでシステムの改良を行っている. 従って問題なく進捗していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,引き続き2つの側面から体系の妥当性の検証を行う.数学的側面としては,記号表現が与えられたときに2次元平面上で交差なく図が描けるための必要十分条件を考察し,その証明を試みる.また,本システムを状態遷移系としてみたときの概念近傍や連続性についても考察する.実施にあたっては計算幾何学の専門家の協力も得る予定である.認知的側面としては,詳細な段階ごとの状態変化の記述も考案し,抽象度の異なるレベルでの記述と人間の認知の関係を考察する. また,作成したシステムを発生生物学に応用しモデルの妥当性とシステム上で可能な推論について検討する.現在考えている推論としては,遷移可能な状態や理論上通ることが可能な系列の提示と実際には特定の系列しか通らない理由の説明であるが,この他にも可能な推論について議論する.さらに,形成器官のに種類によって通る系列が分類できるならば,種類と系列の関係の明確化をし新たな知見の獲得をめざす.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で,予定していた出張が中止になったことと,学会参加費や投稿論文校正費用が不要になったため. 次年度は,出張や対面型学会が可能になった場合は出張旅費等で使用する予定.
|
Research Products
(7 results)