2020 Fiscal Year Research-status Report
生物リズムにおける振動と同期のメカニズムの解明と実験研究の提案
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18K11464
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郡 宏 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80435974)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 同期 / ネットワーク / 生物リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
振動と同期に関する研究は世界的に活発に行われているが、未解決問題は山積しており、また、特に生命科学分野からは、日々加速度的に進化する実験技術の向 上に伴って新たな課題が次々と出現している。本研究課題の目的は、生命システムにおける振動と同期のメカニズムと役割を解明することである。2020年度は、主に、マイクロ・スイマーの振動ダイナミクスの記述とエネルギー論に関する研究を進めた。。微生物は鞭毛を周期的に動かすことにより遊泳するが、鞭毛が複数あるときは流体を介して鞭毛同士が相互作用し、同期を起こすことが知られているある。微生物のスケールにおいて流体は低レイノルズ数であり、非常によい近似でストークス流れとみなすことができる。鞭毛を一次元的に動く質点の往復運動によって記述し、質点間の相互作用はストークス流れが媒介し、それぞれの運動に影響を与える状況を考える。特に、2つの質点が作り出す流れと、その流れによって輸送されるテスト粒子について摂動論的に解析した。その結果、2つの質点の運動には輸送を最適化する位相差があること、また、2つの質点の運動に伴うエネルギー散逸を最小化する位相差と輸送を最適化する位相差に乖離があることを見出した。これらの現象は粒子間の相互作用強度を微小パラメタとした2次の摂動論によってそのエッセンスが説明できている。様々な量に簡潔な表式が得られており、これらは今後の研究によい貢献を与えると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね予定通りに研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点のマイクロ・スイマーのモデルでは質点が決まった時間スケジュールで作動する非自励系としての記述になっている。次の課題として、これらを自励系として自発的な同期と輸送効率について解析を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により国際学会における研究成果の発表がオンラインとなったことが大きく影響している。余った予算は研究補助者の雇用などによって研究加速のために使用する予定である。
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