2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K11486
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
保坂 亮介 福岡大学, 理学部, 助教 (80569210)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 興奮性 / 抑制性 / 均衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経回路を計算機上に実装した。開発はMac上のFreeBSD環境で行い、開発言語にはC言語を用いた。ニューロンモデルには計算コストと再現できる発火パターンの多様性を考え、Izhikevichニューロンモデルを用いた。このモデルは2次の2変数連立微分方程式で記述されるニューロンモデルである。計算コストのさらなる低減を狙いとして、数値計算にはIzhikevichモデルを適応刻み幅制御によって離散化したものを用いた。入力パターンは時空間に構造を持ったものを用い、ポアソン過程によってランダムに生成したものを入力パターンとした。これを繰り返し神経回路に入力することによって入力パターンを学習させている。STDP学習則にはGutigらが関数化したSTDP学習則を用いテイル(Gutig et al., Journal of Neuroscience, 2003)。これはSTDP学習のadditive-ruleとmultiplicative-ruleの両方を1つのパラメータで実現できる利点がある。STDPを引き起こす発火のペアの選択にはnearest neighbor法を用いた。ネットワーク構造はランダム結合とし、結合確率は興奮性ニューロン、抑制性ニューロンに依らず0.2としている。すなわち1つのニューロンが他の2000個のニューロンとシナプス結合を構成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では平成30年度に神経回路の実装を計画していた。研究室が保持しているライブラリを利用してMac上に実装できた。また、抑制性ニューロン-興奮性ニューロンのシナプスにSTDP学習を適用ことが本研究の一つのターゲットであり、抑制-抑制結合もシナプス結合とし、STDP学習の対象としている。STDP学習が適用されるシナプス結合は次の4パターンがある:(1)興奮-興奮、(2)興奮-抑制、(3)抑制-興奮、(4)抑制-抑制。この4つのパターンの組み合わせを網羅するため、$2^4=16$通りのシミュレーションを行い始めることもできた。複数の中央演算装置を有する高性能数値計算機を用いて、これらのシミュレーションをパラレルに実行し、計算時間の短縮を図っている。研究計画に従い研究を進めることができているため、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、「ノイズの混入した入力を神経ネットワークに学習させ、変換能の向上・低下の機能解析を行う」を行う。本研究課題に先行する申請者らの研究によって、興奮性ニューロン-興奮性ニューロン結合にSTDP学習則を持つ神経ネットワークは、ノイズの含まれない入力パターンを学習する場合に比べて、若干のノイズが含まれた入力パターンを学習した場合のほうが学習性能が向上することが示されている。この背後に存在するメカニズムを明らかにするために、シナプス荷重の時間変化を1シナプス単位で追跡する解析方法を開発する。また、機械学習の分野ではモデルのパラメータをデータに調整し過ぎることで汎化能力が低下する「入力に対するモデルの過学習」が知られている。上記の現象もこれに準じたメカニズムにより生じていることが考えられるため、その観点からも調査する。
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Causes of Carryover |
高性能計算機を購入する予定であったが、大規模計算の開始が始まらなかった、翌年度使用額とした。平成31年度の使用計画に加える形で、高性能計算機を購入する予定である。
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