2018 Fiscal Year Research-status Report
腎部分摘出術のSLAMを応用した実用的AR支援と電気メスによる熱影響のモデル化
Project/Area Number |
18K11496
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
小枝 正直 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 准教授 (10411232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
登尾 啓史 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 教授 (10198616)
大西 克彦 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 准教授 (20359855)
小川 修 京都大学, 医学研究科, 教授 (90260611)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RALPN / AR / SLAM |
Outline of Annual Research Achievements |
ロボット支援腹腔鏡下術による腎部分切除により腎機能を維持し,腫瘍除去が可能となった.部分切除では腫瘍を漏らさず除去して正常組織を最大限に残存させることが重要であるが,現状,切除ラインの決定は医師の勘と経験に依存している.そこで医師と密に連携しながら現場のニーズに合った医師の手を煩わせないAR手術支援システムを構築することが本研究の一つの目的である.ARの実現に必要な内視鏡カメラの位置姿勢推定には,SLAM技術を応用する.我々は,SLAMの一つであるORB-SLAMを導入してARを実現するシステムを開発し,臨床実験を数回行っている.実験後,システムに関する意見を医師から集約し,取り込めるものに関してはできる限り速やかにシステムに反映し,改良を続けている.この研究について,The 2019 Annual EAU Congress及び情報処理学会第81回全国大会で発表した.マーカを用いて内視鏡カメラの位置姿勢をロバストに計測可能な手法も検討,開発している.この研究に関する内容を,International Conference on Intelligent Informatics and Biomedical Sciences, Journal of Bioinformatics and Neurosciencesで発表している.また,21th International Conference on Human-Computer Interactionでの発表が決定している.電気メスの熱による生体組織への影響範囲を調査,計測するため,電気メスで試験片を焼いた際の様子をサーモグラフィーカメラで撮影する実験を行っている.この研究に関する内容は21th International Conference on Human-Computer Interactionでの発表が決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内視鏡カメラの位置姿勢をリアルタイムに計測するため,ORB-SLAMを導入した.ORB-SLAMは特徴点ベースのSLAMであり,処理速度が速く導入のしやすさから採用した.手術室へのPC設置はできないため,持ち運びが可能なPC(CPU Core i7-7700HQ, Mem 16GB, GPU GeForceGTX1070)を用いて,960x540ピクセルの映像を入力し,12fps程度で処理できている.daVinciではステレオ内視鏡を用いているためステレオ映像が取り込めるが,両眼カメラの外部パラメータが不明のため,現状では左目映像のみをSLAMに入力している.本システムを用いて,10月下旬,1月中旬,1月下旬,2月中旬に計4回,システム検証実験を行った.また可能であれば,今後の検証に活かすため,ステレオ内視鏡カメラ映像の非圧縮録画も同時に行った.実際に使用した医師から,SLAMによる位置姿勢推定の開始タイミングが分からない,との意見があった.ORB-SLAMの初期化プロセスにおける各種パラメータを調整し,改善を図っている.また,電気メスの熱による生体組織への影響範囲を調査,計測するため,電気メスによる熱の伝わり方をサーモグラフィーカメラで撮影する実験を行っている.電気メスは高周波電流によって生体組織を切開または凝固を行うための手術器具である.主に,切開を行う切開(Cut)モードと出血を止める凝固(Coagulation)モードがあり,メスへの印加電圧,電流,周波数等が異なり,生体組織への影響が異なる.切開モードでは表面付近に強い熱変性が発生し深部への影響は少ない,凝固モードではある程度の深部まで均一に熱変性が発生する,という違いがある.現在,各モードで試験片を焼いた際に発生する熱分布の違いをサーモグラフィーカメラで撮影し,調査している.
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Strategy for Future Research Activity |
AR手術支援システムの構築に関して,カメラ位置姿勢計測には主にORB-SLAMを継続して使用する予定である.現在はステレオ映像のうち一方の映像のみを用いてSLAMを行っているが,今後は左右の映像を用いて精度とロバスト性の向上を試みる予定である.そのためにまず早い段階で両眼カメラの外部パラメータを求める実験を実施する.外部パラメータが求まれば3次元計測が可能となり,術中映像から臓器位置姿勢推定が可能となる.これにより3Dモデルの初期位置推定やずれの補正が可能になると考えられる.位置姿勢の推定にはICPなどの3次元モデルマッチングアルゴリズムを用いる予定である. 一方,電気メスの熱による生体組織への影響調査に関しては,まず熱伝導現象を数値計算によってシミュレートするプログラムを実装する.具体的には,生体組織で発生する熱伝導現象を定常熱伝導と仮定して熱拡散の偏微分方程式を時間方向と3次元空間方向で離散化することで,3次元的な熱移動の時間経過を算出して可視化する.シミュレーションプログラムにおける熱伝導率や時間分解能,空間分解能等のシミュレーションに必要なパラメータを様々に変えてシミュレートした結果と,サーモグラフィーで撮影,計測した実際の熱伝導状態を比較して,シミュレータ上で実現象が再現できるようにパラメータを調整する.これにより対象物体の熱伝導率を求めることが可能となり,深部の温度が推定可能になる.電気メスに印加する電圧,電流,周波数等の条件を変えて実験し,熱伝導の違いを調査し,深部での熱変性と組織への影響を推定する手法を確立する.また年齢や性別,部位,病状などによって生体組織の状態は異なり,熱の伝導も異なることが予想される.様々な状態の生体組織で同様の実験を行い,熱伝導率データベースを構築すること考えている.
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Causes of Carryover |
当初予定との差異が生じた理由としては,申請額から大幅に減額されたために購入すべき物品を十分に選定したことが挙げられる.また当初,サーモグラフィーカメラを本科研費から購入する予定としていたが別の予算で入手でき,購入を見送ったためである. 翌年度は,学会発表に必要な経費が増加することが予想されるため,今年度の余剰分が相殺されると思われる.
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