2019 Fiscal Year Research-status Report
映像表示デバイスにおける観察者自身の立体感感受性を向上させる技術
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18K11503
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
長 篤志 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (90294652)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 立体感 / 視覚ノイズ / 固視微動 / 臨場感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,映像表示デバイスに提示された風景画像に固視微動を模した動的ノイズを付加することによって観察者の立体感の感受性を向上させる技術を確立することを目的としている.平成30年度の研究成果より,当初の計画になかった表示デバイスの解像度,大きさ,ならびに表示画像の周波数特性を考慮することにした.また,実験において奥行き感の判断が難しいという問題があり,それを解決する必要があった.そこで,以下の3つの研究課題をおこなった. 1)平成30年度においてノイズの周波数特性の違いによる奥行き感への影響の違いをについて調べていたが,系統的な結果が得られていなかった.そこで,研究課題1として,これまで明らかになっていなかったディスプレイモニタによる離散的な光刺激入力に対する視覚の時間周波数応答特性をシミュレーションと実験から明らかにした.これにより,リフレッシュレートが低い場合,連続的な入力刺激に対する特性からの違いが大きくなることが明らかになった.付加するノイズの周波数特性においては,この離散的な入力刺激に対する視覚の周波数応答特性を考慮する必要があることがわかった. 2)研究課題2として,実体である写真へプロジェクタによるノイズ投影をするプロジェクションノイズマッピング装置を開発した.これは,カメラとプロジェクタを用いた装置であった.本装置を用いることにより,ディスプレイモニタよりも観察対象の大きさや観察距離に自由度を持たせて実験が行えることとなった.また,実体と比較することで,奥行き感,臨場感の判断が容易になると予想された. 3)研究課題3として,課題2で作成した装置を用いて,奥行き感評価実験をおこなった.実験では,実体である石膏像と写真を見比べて,奥行き感の違いを評価してもらい,写真へのノイズ付加の有無による写真の奥行き感の向上について確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度の研究成果を踏まえて,令和元年度は,当初の計画になかった表示デバイスの解像度,大きさ,ならびに表示画像の周波数特性を考慮する必要ができた.また,実験方法の改良をする必要もあった.そこで,計画にない研究課題を行うこととなった.その結果,離散的な刺激入力に対する視覚の周波数応答特性に関する知見を得た.また,カメラとプロジェクタを用いた装置を構築することにより,ディスプレイモニタ以上の大きな観察対象や観察距離において実験がおこなえるようになった.さらに,奥行き感,臨場感の判断を容易にできるように改良できた.しかしながら,これらの課題を進めるため,新しい実験装置を用いた奥行き感評価実験では,先行研究と同様な結果を確認するにとどまり,奥行き感の向上に寄与する視覚ノイズの最適化にまでは至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,当初の到達目標に至るため以下の2つの実験をおこなう方針である.1)絵画的奥行き手掛かりとの関係性の明確化とノイズの時間周波数特性の最適化.この実験には,令和元年度に作成した実験装置に,プロジェクタならび令和2年度に購入するディスプレイモニタを接続しておこなう.この実験では,モデル空間を制作し,その実体を指標に写真の奥行き感に関するノイズの影響を調べる.奥行き手がかりの異なるモデル空間を制作することによって,奥行き手がかりに合わせたノイズの時間周波数特性を最適化する.2)ノイズ感の低減に向けたノイズ間欠提示の効果とノイズ強度の最適化.ノイズの付加は立体感の向上をもたらすことが可能であるが,ノイズ強度が大きくなると,同時にノイズ感も与えてしまう.これは映像体験において負の印象となる.そこで,インターバルを置いて間欠的にノイズを付加する画像提示方法を試みる.そして,インターバル時間,提示時間とノイズ強度をそれぞれ独立変数とし,奥行き感を従属変数とした奥行き感評価実験をおこなう.
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Causes of Carryover |
平成30年度の研究成果を踏まえて,令和元年度は,当初の計画になかった研究課題を行うこととなった.その結果,予定していたノイズの最適化に関する実験が十分に行えなかった.このような研究実施状況の中,実験に使用するため購入予定であった高精細モニターの購入ができず,また実験参加者への謝金が発生しなかった.平成2年度は,当初の目標を達成するため,実験で使用する高精細モニターの購入をするとともに,ノイズを最適化するための実験をおこなう.
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Research Products
(1 results)