2019 Fiscal Year Research-status Report
同一の教材で全盲と弱視という異なる視覚障害に対応する教育支援システムの開発
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18K11562
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
村上 佳久 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (30229976)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 視覚障害 / 情報補償 / 学習支援 / 全盲 / 弱視 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)学習情報システム端末の改善・改良:同一の教材で、視覚障害者の3種類の教材(一般文字・点字・音声教材)の学習メディアの同時出力が可能なシステムを6校の実験協力校で実証実験を行った結果、様々な問題点が明らかとなり、その改善・改良を行った。また、必要最低限の必要なCPUやSSD、メモリなどの構成と必要なスペックを明らかになり、数台のシステムが試作され、学内の実証実験を行った。また、学習に当たって、必要不可欠な、日本語入力用の専門用語辞書、合成音声読み上げ用の専門用語辞書、リアルタイム点字変換用の専門用語辞書の作成など、実利用に当たっての改善・改良を行い、本学で確認後に、各実験協力校でのアップデートを実施した。 (2)研究協力依頼:全国にある盲学校4校と視力障害センター2校で、学習情報システム端末を貸出し、実証実験を継続している。来年度の予算で、追加で、もう1校ほど機器の貸出しと実証実験を行う予定である。 (3)三種類の教材を同時に展開する電子黒板システムの改良・改善:試作した電子黒板を精査し、端末とは異なり、より高度なスペックで新たなシステムを構築した。CPUの性能が向上するに従って、接続できる端末が増加することが判明し、電子黒板の最適化に向けた改善・改良作業を行った。また、汎用性を持たせるため、他大学での授業やデモなどを実施して、その有効性を確かめるべく実証実験を行なった。また、小規模校向けのシステムについてもデモを通じて実証実験を行った。 (4)コースウェアの開発:盲学校や視力障害センターの教員と共にこれらの学習情報システム端末機器で、利用する様々なコースウェア(教材)について議論をし、各々の実験協力校の実情に応じて実施するようにデモ的なコースウェアを数個用意し、各々の研究協力校で試行している。幾つかの事例について、次年度以降、各学校で報告すると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)学習情報システム端末の改善・改良は、予定よりも進んでおり、各実験協力校での機器のアップデートをハードウェア面とソフトウェア面の両面で実施した。 (2)研究協力依頼では、研究協力校が盲学校・視力障害センター合わせて6校となり、さらに次年度1校の追加を予定しているので、予定よりも進展した。但し、各都道府県の事情により、個別のアンケート調査などには応じていただけない倫理上の問題点もあり、成果を情報公開できない部分も多い。 (3)三種類の教材を同時に展開する電子黒板システムの構築では、予定よりも進展し、汎用性を持たせたシステムに進化した。但し、点字ディスプレイへの無線配信は技術的な問題が大きく、厳しい状況である。全体的には、おおむね順調に進展している。 (4)コースウェアの開発は、実験協力校の依頼により、数個の試作コースウェアを提供し、予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
学習情報システム端末については、もう1校増やして、実証実験を行うべく、協力依頼を数校増やす予定である。6校での、実証実験の途中報告では、拡大文字・点字・音声の同時出力が、非常に効果的であるとの教員の意見が多く、コースウェア(教材)開発に注力して欲しいとの要望が寄せられている。また、授業中に利用できる小型のシステムも検討するよう要望も多いため、11インチ程度のキーボード付きタブレット端末を検証することを検討している。 電子黒板については、おおむね開発を終了したが、点字ディスプレイに対する無線での多数出力が課題として残っており、引き続き検討を進めていく予定である。また、小規模のゼミ授業などでは、文字・点字・音声の同時出力が、全盲や全聾、盲聾や晴眼者等が同時に受講する大学院の授業においても有効であることが示され、教育のユニバーサル化に貢献できることが示唆されているため、より使いやすい改良したシステムを目指す。 さらに、これらのシステムで活用するためのコースウェアを整備して、多くの教材を盲学校・視力障害センターの教員と共に作成して、実証検証を行っていきたい。 一方、学習情報システム端末については、5Gネットワークを利用し、テレビ会議システム等を利用した遠隔授業での利用を検討しているため、それに向けた検討を実施する予定である。
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