2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of welding skill education support method based on user oriented structured skill information
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18K11563
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松浦 慶総 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 特別研究教員 (70282960)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 技能教育支援 / 溶接技能 / 技能情報構造化 / 技能要因分析 / 認知プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,代表者が提案している品質工学手法を応用した技能特性要因解析手法により技能情報を構造化した.構造化に際しては,溶接技能に係る要因を,直接要因,間接要因,身体要因,体性感覚要因,視覚要因の要因に分類し,さらに各要因の関係性を視覚的に解析するために,技能特性要因図により図化する方法を提案した. これまでの溶接教育の情報では,要求されるビード品質を実現するためにアーク長およびアーク状態の安定が必要であり,そのために溶接棒をある一定角度にするとしている.しかし,溶接棒のコントロールについては全く情報がない.本研究で解析を行った結果,溶融速度に合わせて溶接棒を供給しつつ溶接線に沿う動作ができるように,溶接ホルダを支持する手,及び上腕をコントロールする必要があることがわかった.これらより,これらの動きを実現するような身体部位のコントロールが重要であり,従来の技能教育で重視されている「形」はこのコントロールが良好に実現できたときの結果として考えられ,本来は教育の目的ではないという知見が得られた. そこで,効果的な技能教育支援を目的として,これまでの構造化技能情報に新たに「意識―注意―評価」属性の付与をした技能情報を提案した.意識属性は,技能習得に必要な特定の情報の受容感度をあらかじめ高くするために,技能実施前に意識させる情報と定義する.注意属性は,技能品質に関する要因を認知するために意識を集中する情報と定義する.評価属性は,注意属性の際に技能実施中に基準とリアルタイムに比較して,動作を行う際に評価する属性と,終了後に成果物の品質,総括的な身体動作の評価を行う情報と定義する. 新たな技能情報に基づいて実際に溶接実験を実施し,意識属性を学習情報に加えることで,学習者が注意属性に気づき,効果的な学習が行われることがわかった. 本研究の成果に関して国内学会での口頭発表を4件実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の平成30年度の研究予定では,初めに技能特性要因解析手法により,被覆アーク溶接に関する技能情報を構造化し,アーク状態から溶接器具,身体動作,体性感覚等の溶接技能に関連するすべての要素と溶接品質との関係性を明確にし,技能特性要因図を用いて構造化することを目指し,実施することが出来た. 次に,当初は構造化した技能情報について,品質工学手法であるQFD(Quality Function Deployment:品質機能展開)を用いることで,ユーザ要求の技能熟達度に対応した評価項目の選択をシステマティックに行うユーザ指向型技能情報構造化システムの開発を予定していた.しかし,構造化した溶接技能情報の中で身体部位のコントロールに重要な体性感覚要因と,身体部位の3次元空間位置情報,溶接品質情報の関係性が不明確であること,さらに身体技能教育において,体性感覚要因をどのように扱えばよいかという研究は,既往研究に見当たらないことがわかった.そこで,特に初級学習者に技能情報をどのように理解させ,また体性感覚情報に気づかせるかを考えるために,認知プロセスを考慮した提案した「意識―注意―評価」属性の付与をした技能情報構造化手法を提案した. この予定変更により,申請書予定のユーザ指向型技能情報構造化システムの開発が平成31年度になってしまったが,「意識―注意―評価」属性の付与をした技能情報構造化手法により,技能に関する既往研究とは全く違う新規性の高いアプローチとなることから,研究進捗状況は表記として評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,平成30年度で新たに提案した「意識―注意―評価」属性の付与をした技能情報構造化手法に基づき,学習者および教授者の要求する技能熟達度に対応した評価項目の選択を,QFDを適用することでシステマティックに行うユーザ指向型技能情報構造化システムの開発を行う. 提案した技能情報構造化手法から新たな技能教育情報を作成し,各要因の重要度を検討してQFDを適用する.これにより,要求される技能熟達度に必要な要因の抽出がシステマティックに行うことができる.さらに被覆アーク溶接実習を実際に行うことで,「意識―注意―評価」属性が身体動作や溶接品質にどのような影響を与えているかを定量的に解析する.この結果から,計測した客観評価量(項目)とQFDによる評価の比較により,知識と動作結果の関係性を明らかにする. 最終的に得られたデータから被覆アーク溶接技能データベースを作成する.作成したデータベースより熟達度に応じた学習情報データベースシステムを構築し,これにより新たな気づきの創出を促進する学習情報提示システムを開発する.
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Causes of Carryover |
平成30年度の当初支出予定額において,予定していた被覆アーク溶接実験の被験者が予定数より少なかったため,実験試料および人件費が少なくなった. また実績報告に記載したように,身体技能情報の構造化において新たな知見を得ることが出来たため,まずその知見の概念および構造の構築を平成30年度で実施した.それにより,予定していたQFDによるユーザ指向型技能情報構造化システムの開発を次年度に繰り越すことになり,実験試料等の購入についても繰越を実施した.
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