2018 Fiscal Year Research-status Report
個別学習目標をもつ集団に対する協調的学習支援システムの研究
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18K11576
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
美馬 義亮 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (60325892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 協調学習 / 個別学習目標 / 学習支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境変化の激しい社会の中では、その社会の構成員は新たな問題を発見し解決するための能力を培うことが重要である。本研究では、そのように個別性の高い問題に立ち向かうことに対して高い能力をもつ人材の教育手法の探求を目標としている。本研究の特徴の一つは、従来の「知識獲得を中心とした教育」とは異なり、「活動の対象は異なるが、活動の手法に共通点がある」と考えられる卒業研究のような活動を、個別学習としてとらえるのではなく、集団的な学習活動ととらえることである。本研究は、卒業研究の配属研究室のような学習者の共同体内の中で、作業や考察の内容やその変化を積極的に共有することにより、結果として各個人の活動を高めることにができると仮定し、その有効性を確認しようとするものである。個人の活動を高める方略としては、卒業研究において学ぶ、研究活動の様式や個々の研究管理の方法を共有することを基本とする。ここでは、相互の活動内容を参照しながら、それぞれのメンバーが「活動能力の獲得」を行うことを支援することを目指しすことができると考える。これらの学習支援に関する最初のアプローチとしては、卒業研究において各自の研究計画を互いに共有することにより、活動実績の共有を図ることを試みた。この種の情報共有においては、入力作業という作業負荷をともなうため、作業継続を促す動機付けの要素を持たせることも、一定の効果をえるためには重要な要因となる。当該年度においては、本研究でターゲットとする、情報共有を有効に行うための手法について実験的なアプローチをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度においては、卒業研究などの個別学習目標をもつ集団が情報共有を容易におこなうためのシステムデザインに関する調査を行った。調査の手法としては、複数の学習者に対して、情報共有のためのプロトタイプツールの利用や、既存ツールをベースとした情報共有を促すことを行った。 最初の目標として、WEBサイト上で提供されたスケジューラに研究進捗状況を入力し、学習者の自覚的な記録を促すことを試みたが、WEBサイトからのスケジュールの入力に対する作業負荷が大きいためか、結果的にはスケジューラの利用度を高めることは、現状では達成できず、この手法による情報共有が実現できたとは言えない状況である。これらを改善するためには、スケジューラを用いて得られる機能を強化するなどの方策などを検討している段階である。情報共有については、スケジューラによる方法ばかりではなく、既存のWIKIやSNSによるメッセージの交換および議事録の保存による情報共有を並行しておこなっている。これらの記録は、研究の進行状況を管理、観察するには有効であり、当該年度の卒論のテーマ決定に至るプロセスには、最初から変更せずにすすむ順調なものから、何度も変更を繰り返すパターンまで、様々なパターンがあることが明確になった。これらの観察結果については、教育工学会で発表を行うことができた。 当初の目標と異なるのは、学習者自身の行動に注目すると、他者の活動を自発的に注視する活動は顕著とは言えず、目標とする内省的活動を高めるためには、提供されている学習環境にさらなる工夫が必要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
学習者がもつ、内省をともなう思考の外化の行為を発生させることが、本研究の目標の一つである。スケジューラの使用によって、自然で自発的な方法によって研究の進捗共有を行う方法を模索している。我々の環境においては、現状では、十分に思考を外化させ、それらの共有を可能にするという状況はまだ生じていない。このため、学習者の内省を促す方法として、今後はより直接的に、卒業研究の研究計画を言語化・図式化する課題を学習者に与える試みを行う。 この試みでは、外化された研究計画を共有化し、それらの情報を共有するだけではなく、これらに対して情報を共有したメンバーが批評を行うことにより、研究促進についてのより深い理解を促すことができる環境のデザインを行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品購入価格見積もりに誤差があったため。来年度は、文具等の購入費用にあてる。
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