2018 Fiscal Year Research-status Report
アクティブラーニングとe-learningによる小学生用防災教育カリキュラム開発
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18K11583
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
森 博彦 東京都市大学, 知識工学部, 教授 (10247124)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 防災教育 / ハザードマップ / 認知地図 / 発達過程 / アクティブラーニング / e-learning |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は小学生児童のための防災カリキュラムの構築と子供の認知地図発達過程の解明にある。2018年度は、前者の目的に対しては児童が共有できるハザードマップの作成をテーマに、学校内での講義とフィールドワークでハザードとなりうる箇所の探索を行うカリキュラムとタブレットPCのシステムの開発を行い、新宿区立愛日小学校5年生に対し総合の時間を用いて6回の授業をおこなった。1回目は防災に対する基礎知識、2回目はそれを踏まえた上で街を探索してハザードを探すフィールドワーク、3回目はタブレットを用いてハザードを入力しクラスでディスカッション、4回目はディスカッションの結果を踏まえて再びフィールドワーク、5回目はその入力とディスカッションを行い、5回目でその結果のプレゼンテーションの準備、6回目は班ごとのプレゼンテーションを行った。結果として1回目のフィールドワークに比べて2回目のフィールドワークではハザードとなりうる箇所をすべての班が多く発見でき、防災意識が高まる様子が見て取れた。また、自分がフィールドワークを行っていない場所についてのハザードも学年で共有することができた。 2つ目の目的に対しては、児童と父兄に通学路の手書き地図を描いてもらい、比較を行った。その結果、実際には直角に交わっていない交差点では、児童は正確に描くのに対し、おとなになると直角に描くようになっていた。また、元と渡った先の道幅が違う場合にも、児童は正確に描くが、大人は同じ太さで描くことがわかった。すなわち、認知地図の発達過程において、街を抽象化して捉えていくようになっていくことがわかった。更に、ランドマークなどの捉え方の違いも発見された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
システム開発は順調に進み、小学生が使っても問題ないレベルで実装し実際に授業を行うことができた。このことは順調に進んだと考えている。しかし、「おおむね」とした理由は、2018年度の授業で使用したタブレットは小学校所有のタブレットを使って行ったためである。小学校のタブレットは大型でありフィールドワーク時に持って出ることは困難なサイズであり、小型のタブレット発売が発表されていたため、発売されるのを待っていたが授業には間に合わなかった。本年度は小型のタブレットでフィールドワークに出て問題がないかを検討する。 認知地図の大人と子供の違いについては、子供が正確に街を再現するのに対し、大人は比較的抽象化していることが発見できた。この結果は当初こちらが持っていた仮説とは逆の結果であった。これは大きな発見であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまずシステムを小型タブレット用に変更すること、小学校のネットワークではなくこのカリキュラム専用のネットワークを構築し、児童が入力したデータを専用サーバーで収集できるようにすることが最初の課題である。 カリキュラムの内容については、昨年度は基本的に通学路で行った。そのためハザードについて発見したのかすでに知っていたのかが曖昧になった点もあった。そのため、本年度は通学路と違うエリアでフィールドワークを行いたいが、安全面の配慮から学校側との相談が必要である。 認知地図の発達過程についてはより差を明確にするために、昨年度より広域な地図を描いてもらい、方向感覚の違いや地域の位置関係についての差異を見出したいと考えている。
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Causes of Carryover |
申請時には発表されていなかったより適した小型タブレットの発売が発表されたため、そちらに切り替えたことと業者による値引きが入ったことが差異となった。本年度は購入した小型タブレットにシステムを載せ替え、新宿区のネットワークとは独立した閉じたネットワークを構築して授業を行う。またフィールドワークにおいては、すべての班で購入したビデオカメラを使用して児童の行動を記録し、街の捉え方から児童のメンタルマップの分析を行う。
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