2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K11608
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
水口 充 京都産業大学, 情報理工学部, 教授 (60415859)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エンタテイメント性 / 偶然性 / 主観的確率 |
Outline of Annual Research Achievements |
エンタテインメントコンピューティングにおける偶然性の利用指針を得ることを目標とし、遊戯者が感じる主観的確率の影響を調査した。 8枚のコインを投げすべてが表であれば当たりとなるゲームにおいて、8枚同時、4枚ずつ2回、2枚ずつ4回、1枚ずつ8回、の4パタンの結果の表示方法を設定した。多段階な表示ほど期待感が徐々に高まるのでエンタテインメント性に富むと予想される。被験者実験を行い予想が支持されることを確認した。 更に、抽選結果を予感させる演出の効果を調査した。例えば8枚同時に結果を表示するパタンにおいて、7枚目まで表である時に1/2の確率で大当たりになる予告を行うと、1枚ずつ8回に分けて表示するパタンと同様の期待感を与えると予想される。この通知手法について実験を行い、予想通りの効果を有する上、予告タイミングを調整することで遊戯者の感じる期待感の時間的な変化を高い自由度で設計できることを確認した。 また、期待感は抽選結果の履歴の影響を受けると予想される。例えば惜しくも外れる状況が続いたときに、次こそは当たると期待度が上がる、或いは次も外れるに違いないと期待感が落ちる、といった影響が考えられる。この影響を調査するために、上記のゲームにおいて見かけ上の表の出現確率を0.5、0.6、0.7、0.8に設定して比較したところ、多くの実験協力者は出現確率が高い設定ほど期待感が高まる一方で、一部の実験協力者では0.6~0.7を期待感のピークとしていた。 平行して、偶然性を含むエンタテインメントの事例として、ソーシャルゲームにおけるガチャ(抽選でアイテムやキャラクタを得る手段)の確率や演出パタンの事例収集・分析を行った。当選確率は3%が最頻値であること、当たりを予告する演出には共通的な表現パタンが存在すること、などが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、遊戯者が観測する抽選状態、演出による当たりへの期待感、抽選履歴によって主観的確率は操作可能であり、エンタテインメント性に影響を与えることが確認できた。 基本的な実験方法を確立することができた一方で、生理指標として使用した皮膚電気反応は反応が現れるまでの遅延時間があるため、結果の表示時間が短い本実験では扱いにくいことが分かった。心拍等の別の指標の利用を検討したい。 また、ギャンブル経験などの実験協力者のプロファイルによってエンタテインメント性の感じ方の傾向に違いがあることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は当初の計画に沿って、引き続き主観的確率の影響の実験的調査、表示方法や演出によって主観的確率を能動的に操作するゲーム作品の試作、事例収集・分析を行う。 主観的確率の影響の実験的調査については、制御幻想に関する要因の一つである関与に着目して進める。制御幻想は「客観的確率よりも不適切に成功確率を高く見積もること」と定義されるが、近年の研究では遊戯者は成功確率を客観的に正しく見積もりながらもより楽しむことが示されている。関与として、ボタンを押すなどのインタラクションの効果を調査する。例えば、スロットマシンの停止ボタンを押す回数によってエンタテインメント性に違いが生じるか、といった効果である。 表示方法や演出による主観的確率の操作については、ガチャを題材としたカードとアプリを併用したゲームを作成する。表示方法や演出の違いが及ぼす効果を調査するためには、積極的に関わることが必須であるが、実験的なアプリでは楽しみにくく単なる作業になりがちであるという問題があった。ゲーム化することでこの問題を解決する実験環境を得ることが期待できる。
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