2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K11608
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
水口 充 京都産業大学, 情報理工学部, 教授 (60415859)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エンタテインメント性 / 偶然性 / 主観的確率 / 制御幻想 |
Outline of Annual Research Achievements |
エンタテインメントコンピューティングにおける偶然性の利用指針を得ることを目標とし、今年度は偶然の遊びの面白さの本質に関する考察と、偶然の遊びにおける遊技者の関与が熱中度に及ぼす影響の調査を中心に進めた。 研究代表者はエンタテインメントの本質を心の動きで説明する活動を展開している。本研究課題の扱う偶然の遊びは、偶然の持つ本質自体が不安や喜びなどの様々な感情の揺れ動きを引き起こすものであると解釈した。感情の動きの変化量と速度は面白さに対応しておりルールや演出で制御可能である。この例証として後述の実験用ゲームを設計した。 偶然の遊びにおいて、Langerは「客観的確率よりも不適切に成功確率を高く見積もる」制御幻想を提唱した。近年の研究では、遊戯者は成功確率を客観的に正しく見積もりながらも、制御幻想を起こす要因により熱中度が高まる可能性が示されている。そこで、遊技者が主体的に関与する手段としての操作の影響を調査した。 まず、回転開始・停止のためのボタンを押す回数(操作量)のみの異なる3種類のスロットマシンを作成し、実験協力者に遊んでもらい、楽しさ、期待感、煩雑さ、などの印象を回答してもらう実験を行った。その結果、操作量が多い方が期待感は増すが煩雑さも増すため、総合的には適度な操作量が最も楽しめるという結果が得られた。 次に、遊技者が自由に操作できる環境において操作量と楽しさの関係を調査した。このためには遊技者が遊びに積極的に関わることが必須であるが、実験的なアプリでは楽しみにくく単なる作業になりがちであるという問題がある。そこでガチャを題材としたカードと抽選アプリを併用したゲームを作成した。実験の結果、当選への期待が高い状況では操作量が増えジンクス的な特殊な操作が行われた。さらに、他の遊技者に対するアピールやエピソード作りといったコミュニケーション的な要因も大きいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、偶然の遊びのエンタテインメント性に寄与しうる要因を整理し、これまで分析した結果の見せ方(演出)に加えて、遊技者の関与としての操作が影響することを確認できた。さらに、演出や操作といった体験は遊技者本人のみならず一緒に遊ぶ競争相手や観戦者と共有することでエンタテインメント性が一層強化されることも確認できた。 偶然の遊びにおける要因とエンタテインメント性を検証するようルールや演出を設計した実験用ゲームを作成した。このゲームは一見技巧の余地のあるように見えるが実際は偶然のみで勝敗の決まるものにも関わらず、楽しめるとテストプレイ参加者の評価は高かった。また、このゲームを操作とエンタテインメント性の関係の分析に使用した。従来の実験用ゲームでは実験参加者のモチベーションの維持が課題であるが、真に楽しめる道具を用いることで報酬に寄らずに実験への参加度合いを高くすることができ、またエスノグラフィカルな分析も可能な実験手法となった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は当初の計画に沿って、作成したゲームを調整して偶然の遊びに寄与する要因の分析をさらに進める。特に、感情の変化が大きくなる状況として有利/不利の逆転が挙げられる。このような逆転をルールや演出で作り出すことでのエンタテインメント性の制御を検討する。 また、これまでの実験を通じて、遊技者のプロファイルによってエンタテインメント性の感じ方に大きな違いがある可能性を確認している。このことを検証するために、エゴグラム分析による遊技者の特性による感じ方の違いを分析する。 操作による関与は、ボタンやタッチ操作といった単純なものよりも、触覚や皮膚感覚などのフィードバックがある方が強まると予想できる。このことを確認するために、タンジブルユーザインタフェースや温冷感覚呈示デバイスを試作し効果を調べる。
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Causes of Carryover |
3月に予定した学会出張がCOVID-19感染拡大の影響でオンライン開催となったため次年度使用額が生じた。研究調査および成果発表旅費、および研究資料の購入に使用する。
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