2021 Fiscal Year Research-status Report
L-バンドマイクロ波センサを使った高風速・強降雨域の海上風速推定
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18K11611
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
江淵 直人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (10203655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 泰人 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (40627246)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 衛星リモートセンシング / 海上風 / L-バンドマイクロ波センサ / 大気海洋相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,近年入手が可能になった衛星搭載 L-バンドマイクロ波センサ(放射計,散乱計,合成開口レーダ)のデータを利用し,熱帯低気圧中心部などの高風速・強降雨域の海上風速を高精度で推定する手法を開発することを目的とする.これまで,衛星観測による高風速域の海上風速は,基準となる正確な現場観測データを得る手法がないため,主に,中風速域で求めた係数等を高風速域に外挿することで推定されており,精度の評価も難しい状況であった.これに対し,本研究では,降雨の影響が少ない L-バンドマイクロ波センサの観測データを利用し,最近の国際ワークショップで推奨された校正済みの航空機搭載マイクロ波放射計のデータを基準風速とする手法を適用して,高風速(20 m/s 以上)・強降雨域の海上風速を高精度(± 7 m/s 以内)で推定するアルゴリズムを開発し,台風・ハリケーン・サイクロンなどの熱帯低気圧周辺の高風速域のデータセットを作成する. 今年度は,昨年度までに引き続き,米国海洋大気庁の研究協力者から入手したドロップゾンデデータで校正済みの航空機搭載 Stepped-Frequency Microwave Radiometer (SFMR) の最新版データに空間平滑化を施すことによって作成した衛星センサの空間分解能(30~60 km) に対応する基準データを使用して,Aquarius 衛星および SMAP 衛星に搭載されたL-バンドマイクロ波放射計用の風速算出アルゴリズムを作成した.このアルゴリズムで算出したハリケーン周辺の高風速・強降雨域の海上風速データは,残差の標準偏差 3.8 m/s 程度で基準データとよく一致することが示された.このアルゴリズムを使用して,2011年~2020年の北太平洋・北大西洋の台風・ハリケーン周辺の海上風のデータセットを作成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画調書に記載した,高風速域データセットの作成・拡張,検証,相互比較がほぼ完了した.しかしながら,コロナ禍の影響によって成果発表を予定していた学会,シンポジウム等が延期・中止になった.また,研究分担者,国内外の研究協力者との研究打ち合わせも電子メール,ウェブ会議に限定されており,研究の最後の詰めと論文化,データセットの公開が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を再度延長したことにより,検証用の航空機搭載 SFMR の観測データがさらに1年分増える見通しで,それを用いて,これまでに作成した高風速域の風速データセットの検証と誤差要因の特定をさらに進める予定である.また,次年度,新型コロナ感染の状況が改善されれば,研究分担者・研究協力者(国内外)との研究打ち合わせを開催するとともに,国際学会やシンポジウムなどに参加して研究成果を発表したい.改善が望めない場合は,ウェブ会議や電子メール,文書のやり取りで研究を遂行する.
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Causes of Carryover |
今年度予定していた国際ワークショップにおける研究成果発表,情報収集,および国内外の研究協力者との研究打ち合わせなどがコロナ禍の影響で実施できず,研究期間を延長して予算を繰り越した.次年度,状況が改善すれば,同じ目的で使用する予定である.状況が好転しない場合,研究継続に必要な計算機関係の消耗品等に使用し,残額が生じれば返納する.
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