2018 Fiscal Year Research-status Report
水安定同位体比を用いた大気汚染物質が降水システムに与える影響評価
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18K11616
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
猪股 弥生 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (90469792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐瀬 裕之 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 生態影響研究部, 部長 (20450801)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水素・酸素安定同位体比 / 人為起源大気汚染物質 / 豪雨 / 降水 / 気象モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、越境輸送による大気汚染物質が降水システムに与える現象について調べることを目的に、降水をもたらす水蒸気発生域や雲物理過程により変動する水の酸素・水素安定同位体比、大気汚染物質(越境及び国内大気汚染物質)の最終形態である降水中の水溶性イオン濃度と降水強度の関係、気象データ解析を行う。 降水の酸素・水素安定同位体比は、気温、降水量、降雨をもたらす水蒸気の起源など、気象状況によって大きく変動するものと考えられている。従来の研究において、水の酸素・水素安定同位体比やそれらから推定される同位体分別の指標であるd-excess値は、水が蒸発した海域等の降水の起源推定等に用いられてきた。近年、日本各地では、過去の観測値を超える降水量が頻繁に生じており、これまでとは異なった降水形態が起きていることを示唆されている。その原因として地球温暖化に加えて、大気汚染物質の関与の可能性もある。本研究では、日本の大都市である東京、日本から遠く離れているため清浄な大気であると考えられている小笠原、アジア大陸起源の越境輸送物質を直接観測できることが可能な金沢において採取された降水試料中の水の酸素・水素安定同位体比を測定した。さらに、水溶性イオン濃度との関係に着目して解析を行った。2015年度の冬季及び夏季の降水データから、小笠原では、硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオンの2次生成粒子と、水の酸素・水素安永同位体比に相関が認められた。小笠原におけるこれらの成分は広域輸送に支配されていることをしているものと考えられた。一方、東京では、これらの成分については相関が認められず、日本国内の局所的な発生源の寄与が大きいことを反映しているものと考えられる。一方、東京では、塩化物イオン、ナトリウムイオンなどの海塩成分との相関が認められ、日本沿岸の海洋からの水分供給に伴って、降水が形成されたことが考えれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、東アジア酸性雨モニタリングネットワークで採取した降水試料の水溶性イオン濃度のデータが確定された後の廃棄試料を用いて酸素・水素安定同位体比の変動を測定している。そのため、昨年度は、東京(日本都市大気)及び小笠原(海洋清浄大気)降水試料について、2016年度分の酸素・水素安定同位体比の分析を行い、酸素・水素安定同位体比と水溶性イオンの濃度の関係等を調べた。また、アジア大陸からの越境輸送を捉えることが可能な日本海沿岸の金沢において、降水試料の採取を開始した。今年度は、2017年度に採取された東京・小笠原や日本海側の金沢で採取された降水中の酸素・水素安定同位体比を測定する。さらに、再解析データを用いた気象解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度に引き続き観測及び分析を行い、データを蓄積しつつ、解析を行う。特に2017年度に採取された東京・小笠原の降水試料や2018年度に金沢で採取した降水について、降水中の酸素・水素安定同位体比の分析を行い、季節変動・年々変動や水溶性イオン濃度との関係を明らかにする。降水中の水溶性イオン濃度は、降水初期に高く時間がたつにつれて減少することから、ある特定のイベント(激しい降水)について、時間単位で採取し、降水中の水溶性イオン濃度の変化をガス・粒子状物質濃度や気象変化をもとに解析する。さらに、降水強度の違いによる水の酸素・水素安定同位体比やd-excessの違い、大気汚染物質濃度との関係を明らかにする。 また、再解析データや化学輸送モデルを用いた気象解析を組み合わせることで、越境輸送による大気汚染物質が降水システムに与える影響を調べる。
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Causes of Carryover |
降水中の酸素・水素同位体比の分析を、総合地球環境研究所の分析機器を使用して行っているが、分析利用が多くマシンタイムが取れにくい状況だったため、当初予定していた分析検体数よりも少ない状況となった。そのため、分析費用が当初の予定よりも少なくなった。 この予算は次年度の分析費用として使用する予定である。
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Research Products
(22 results)
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[Journal Article] 6.Aerial observation of atmospheric nanoparticles in Fukue Island, Japan.2019
Author(s)
Lee, K., Chandra, I., Seto,T., Inomata, Y., Hayashi, M., Takami, A., Yoshino, A. Otani, Y.
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Journal Title
Asia Air Quality Research
Volume: 19
Pages: 981-994
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] 2.Estimate of Fukushima-derived radiocaesium in the North Pacific Ocean in summer 20122018
Author(s)
Inomata, Y, Aoyama, M, Tsubono, T, Tsumune, D, Kumamoto, Y, Nagai, T. Yamagata, H, Kajino, M, Tanaka, T, Sekiyama, T, Oka, E, Yamada, M
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Journal Title
J. Radioanal.Nucl. Chem
Volume: 318
Pages: 1587-1596
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] 4.Radiocaesium derived from the TEPCO Fukushima accident in the North Pacific Ocean: surface transport processes until 2017.2018
Author(s)
Aoyama, M., Hamajima, Y., Inomata, Y., Kumamoto, Y., Oka, E., Tsunono, T., Tsumune, D.
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Journal Title
Journal of Environmental Radioactivity
Volume: 189
Pages: 93-102
DOI
Peer Reviewed
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