2020 Fiscal Year Research-status Report
腐植ーアルミニウム複合体の安定性はどこからくるのか?
Project/Area Number |
18K11622
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
柳 由貴子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (20412819)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 土壌有機物 / 腐植 / 酵素 / 土着微生物 / 安定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌の炭素蓄積機能にはアルミニウムー腐植複合体(AlーHS)の関与が大きいと考えられている。そこで本研究課題では,AlーHSの安定化メカニズムについて主 たる要因として考えられてきた「AlーHS由来Alの毒性による微生物活性の抑制」および「複合体形成によるHSの化学的安定性の増大」という2点に着目して検討を行うものである。 R2年度は,調製したAlー腐植酸複合体(AlーHA)を用いて,AlーHA安定化メカニズムの一つの候補として考えられるAlーHAによるHS分解酵素活性の抑制効果の関与について昨年度の検討結果を引き継いで、検討を行った。すなわち、まず初めにAlーHAが溶解しない緩衝液の設定を行い、新しくAlーHAの影響を検討可能な実験系を確立させた。次に、濃度の異なるAlイオンもしくはHA, AlーHA存在下における腐植分解酵素ラッカーゼの活性変化を酸素電極を用いて測定し,反応速度論的に解析を行った。その結果ラッカーゼ活性はAlイオン存在下では大きな変化は認められなかったが、HAおよびAlーHA存在下では大幅に低下、抑制が認められた。またその活性阻害様式は、複合非競合阻害であった。しかしながら、HAとAlーHAとの間に阻害作用の程度に有意な差異は認められなかった。 また、これまでの研究ではモデル微生物としてHA分解能の高いCoriolus consorsを用いていたが、実際の土壌生息菌でも同様に複合体形成によるHAの安定化が認められるかが不明であった。そこで、土壌型の異なる2つの土壌を接種源として、昨年度や一昨年度と同様のAlーHAの分解試験を行った。その結果、AlーHA添加区はHA添加区よりも褪色抑制を示したことから、土壌生息菌に対してもAlとの複合体形成によりHAは安定化することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、コロナウィルス感染拡大の影響を受け、実験の進行とサンプリングのタイミングが遅れた。その影響を受けて、やや進捗は遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は土着微生物の培養系において、微生物活性の変化を検討する。また、その他の安定化メカニズムと考えられる抗酸化活性の関与についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた学会などが全てオンラインになったことにより、予算の執行が滞っていた。それとともに、年度末近くになり研究の遂行に必須である大型遠心機が故障し、次年度に代替機器もしくは他大学での機器の利用の必要が考えられたため、次年度へ繰り越しを行なった。
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