2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies on tracing dissolved organic matter molecules from forests to the estuary
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18K11623
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Research Institution | Chitose Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
井手 淳一郎 公立千歳科学技術大学, 理工学部, 准教授 (70606756)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超高分解能質量分析法 / 森林管理 / 土地利用 / 共通分子 / 固有分子 / 難分解性有機物 / 針葉樹林 / 広葉樹林 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の目的は超高分解能質量分析法(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析法:FT-ICR MS)によって得られる溶存有機物(DOM)の構成分子種に関する膨大な情報を整理し,環境中におけるDOMの質の変化を追跡するトレーサーとしてDOM構成分子種を用いる手法を構築し,森林から河川への輸送過程におけるDOMの動態について検討することである。一方,本年度は新型コロナウィルスの影響による出張制限や分析機器の故障等により調査・分析を進めることができなかった。そこで,本年度の実施事項の焦点をこれまでにFT-ICR MSによって取得したマススペクトルデータの解析に絞った。具体的に,森林を通過する雨水中のDOMの構成分子種の時間変化について詳細に検討した。このため,九州大学演習林のスギ林,およびマテバシイ林において採取した林外雨,林内雨,および土壌水の試料水中のDOMを構成する分子の種類と数を,採取時期(2月と12月)間で比較した。 スギ林とマテバシイ林における林外雨,林内雨,および土壌水のDOM構成分子種のデータを全てプールして解析した結果,採取時期によって構成分子種が有意に異なった。さらに,12月の林外雨は2月のそれに比べ脂質に分類される分子種が多く,リグニン様物質が少なかった。12月の林内雨および土壌水も脂質の分子種の割合が高く,林外雨のDOMの質を反映していた。これらのことから,2月と12月のDOM構成分子種の有意な違いは森林へのDOMのインプットとなる林外雨の構成分子種に起因すると考えられた。すなわち,DOM構成分子種を森林におけるDOMの動態把握に用いる際は林外雨中DOMの質の時間変動を考慮する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は新型コロナウィルスの影響で出張制限を受けたり,また,分析機器(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析計)が故障したりしていたために分析を実施することができなかった。また,令和2年度より申請者の所属が北海道に変更となったが,新型コロナウィルスの影響で調査地である九州大学農学部付属演習林への入林も制限されたため,調査もほとんど実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
分析機器が復旧次第,新型コロナウィルスの感染状況を踏まえながら,残りの試料水の溶存有機物(DOM)の構成分子種を分析する。それから,林外雨,林内雨,土壌水,および河川水間でDOM構成分子種を比較する。これによって,河川水のDOMが森林内のDOMをどの程度反映しているかを検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で出張制限を受けたり,分析機器(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析計)が故障したりしていたために,他機関にある当該の分析機器を使用するための出張を行うことができなかった。また,令和2年度より申請者の所属研究機関の所在地が北海道に変更となったが,新型コロナウィルスの影響で調査地である九州大学農学部付属演習林への入林も制限され,調査もほとんど実施できなかった。これらのことから,旅費や調査・分析に係る消耗品の執行ができなかった。
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