2019 Fiscal Year Research-status Report
根呼吸の日中低下現象の実態解明:陸上生態系炭素循環モデルの精度向上を目指して
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18K11624
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
坂田 有紀子 (別宮有紀子) 都留文科大学, 教養学部, 教授 (20326094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 剛 北里大学, 一般教育部, 准教授 (60205747)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 根の呼吸速度 / 蒸散速度 / 光合成速度 / 日中低下 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは冷温帯樹種であるミズナラとヒノキ、シラカンバ、イヌツゲにおいて「根の呼吸速度の日中低下現象」を発見し、根の呼吸速度が葉の蒸散速度の影響を受けることを発見した。本研究では、他の気候帯の樹種でも同様の現象が起きているのかを明らかにするために、亜熱帯の小笠原諸島、および寒帯の富士山の主要樹種を対象に、根の呼吸速度と葉の蒸散速度の関係について研究をおこなっている。 2019年度は、小笠原諸島父島の大神山において、亜熱帯性低木であるテリハハマボウとシャリンバイの二種を対象に、根の呼吸速度と葉の光合成・蒸散速度の測定をおこなった。それぞれの樹種につき、3個体を繰り返しとして用意し、根の一部を掘り出し、溶存酸素計を装着した呼吸測定用チャンバーに入れ、水中で呼吸速度の連続測定を実施した。光合成と蒸散速度はLI-6400を用いて、日の出から日の入りまで、1個体につき、3枚から6枚の葉の光合成速度・蒸散速度・気孔コンダクタンスなどを測定した。 テリハハマボウとシャリンバイのどちらも、午前10時から午後3時までの間に、断続的に光合成と蒸散速度が低下する日中低下現象が観測でき、また根の呼吸速度も、温度の影響とは考えられない断続的な低下が観測された。しかしながら、測定装置の制約上、根の呼吸速度は1個体につき、1サンプルしがとれないため、測定に用いた個葉の蒸散速度の変動と、測定した根の呼吸速度が、直接的に連動していることを立証することはできなかった。葉の蒸散速度の低下と根の呼吸速度の低下に因果関係があるのかどうかを検証するために、2020年度は、根の呼吸速度と葉の光合成・蒸散速度の測定に加えて、地際の茎および測定葉直下の茎の道管流の測定をおこなう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内業務が多忙を極め、十分な研究時間の確保が難しい状況にはあるが、小笠原諸島での調査は予定どおり進行している。他の気候帯(亜寒帯・暖温帯)の調査については、当初予定より遅れての開始となるが、2020年度からおこなう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度末から、新型コロナウィルスの影響で小笠原諸島への立ち入りが大きく制限されているため、小笠原諸島での研究の遂行が困難な状況にある。そのため、2020年度は小笠原諸島での調査は見合わせ、他の気候帯(暖温帯と亜寒帯)の樹種の測定を優先しておこなう予定である。2019年度の小笠原での調査では、測定系やプロトコルの課題が見つかったので、2020年度は、根の呼吸の測定法を改良し、新たに道管流の測定と、土壌含水率の測定もおこなう。これによって、根の呼吸速度の測定精度と正確度の向上がもたらされ、根の呼吸速度を律速する環境要因と植物体内の律速メカニズムが明らかになると予想される。 しかしながら、小笠原諸島での調査が、新型コロナウィルスの影響により、2020年度内に実施できない場合は、対応策として調査結果次第では研究期間の延長も考えている。
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Causes of Carryover |
当該次年度使用額が生じた理由としては、富士山における亜寒帯の樹種の調査が遅延しているため、旅費と野外測定補助の謝金の分の予算が執行できなかったためである。2020年度には、亜寒帯樹種と暖温帯樹種の調査をおこなう予定であるので、その旅費と調査補助の謝金として執行する見込みである。また測定系の見直しにともない、改良型呼吸測定チャンバーの購入と、溶存酸素センサーの出力値を記録するデータロガーを新たに導入する予定である。そのための費用として当該次年度使用額と2020年度請求額を執行したい。
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