2020 Fiscal Year Research-status Report
根呼吸の日中低下現象の実態解明:陸上生態系炭素循環モデルの精度向上を目指して
Project/Area Number |
18K11624
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
坂田 有紀子 (別宮有紀子) 都留文科大学, 教養学部, 教授 (20326094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 剛 北里大学, 一般教育部, 准教授 (60205747)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 根の呼吸速度 / 蒸散速度 / 光合成速度 / 日中低下 / 道管流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマでは日本の主要な気候帯(亜寒帯、冷温帯、暖温帯、亜熱帯)における優先樹種の根の呼吸速度と蒸散・光合成速度の関係を明らかにし、根の呼吸速度を律速する内的要因を明らかにすることを目的としている。2020年度は、8月中旬から9月上旬にかけて、小笠原諸島父島の大神山で、テリハハマボウとシャリンバイの2種の根の呼吸速度と葉の光合成・蒸散速度の測定をおこなう予定であったが、コロナ禍の影響で、小笠原諸島父島への立ち入りが制限され、父島で調査・研究ができなかった。そのため2020年度は、暖温帯の常緑広葉樹林の主要樹種であるアラカシとシラカシを対象に、樹冠の個葉の光合成・蒸散速度と根の呼吸速度および道管流の同時測定をおこなった。常緑広葉樹であるシラカシとアラカシの光合成・蒸散特性は大きく異なり、同じ光量子密度でもシラカシの方がより光合成速度と蒸散速度が高く、アラカシはシラカシに比べて、光合成速度が低く、気孔も閉じやすいことがわかった。蒸散速度と道管流の同時測定の結果、道管流は蒸散速度の増減に少し遅れて反応する結果が得られた。根の呼吸速度については、酸素濃度系を用いた高分解能呼吸測定システムを用いて測定に臨んだが、呼吸チャンバーに不具合があり、信頼できるデータが取得できなかった。現在、測定システムの改良をおこなっている最中で、2021年度の小笠原での調査・研究に向けて準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響で、2020年度に予定していた小笠原父島での野外測定がおこなえなかったため、亜熱帯樹種の根の呼吸速度と蒸散速度との関係について、まだ信頼性の高いデータが得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度までの研究期間の延長が認められたことにより、2021年度の5月・6月に、大学周辺に自生する暖温帯樹種であるアラカシとシラカシの根の呼測定と蒸散速度・道管流の測定を終わらせ、8月・9月には小笠原父島での亜熱帯樹種を対象とした測定をおこなう。これによって、研究計画にあった亜熱帯、暖温帯、冷温帯の主要樹種については目標通り遂行できる見込みであるが、亜寒帯の主要樹種については、研究期間内に終了できない見込みである。したがって、研究期間終了後の2022年度に富士山3合目付近のシラビソとカラマツを対象として測定をおこなう予定である。対象とする全樹種の現地測定が終了した後、根の呼吸量を推定するたための数値モデルの構築に取り掛かる。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍により当初予定していた小笠原諸島父島での調査が実施できず、旅費と謝金の執行ができなかった。2021年度までの研究期間の延長が認められたので、2020年度予定していた父島での調査を遂行するために、前年度余剰金を使用する。
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